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高校サッカー 3か月前

近江高校の躍進を支えた「7つの班」。高校サッカー選手権準優勝「こんなに細かく仕事があるのか…」部員も驚くその内容とは

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

「ゼロからやってみたかった」前田高孝監督が歩む指導者キャリア


「プロで活躍するにはサッカー面だけでなく、もっと人間的な成熟度が足りなかったのな、という感じですよね。いろいろなところにアジャストできるような力がなかったのかなと」

 人生をもう一度見つめ直したい、という考えのもとで、予備校通いを経て関西学院大へ入学。夏休みや冬休みを利用して東南アジアのさまざまな国を、バックパッカーとして巡って見聞を広げた。インドでガンジス川に入水したときには腸チフスに感染し、帰国後に発症して隔離された苦い経験もある。

 一方で複数のサッカースクールでコーチを務め、その手腕が評価されて現役学生のまま関西学院大サッカー部コーチに就任。卒業後の2013年度からヘッドコーチに昇格し、2014年の全日本大学サッカー選手権大会で準優勝を果たす。それと前後して近江からオファーを受けた。

「関西学院大は伝統もあり、毎年のようにいい選手が集まりますけど、自分としてはゼロからやってみたかった。その意味で、近江に来たのは一人の指導者として自分が生きていけるかどうかの勝負でした」

 赴任する前は滋賀県の強豪、野洲に二桁失点で敗れ、学校の強化部にも指定されていなかった近江でスタートさせたチャレンジ。一大決心には東南アジアで見た、市井の人々の生き様も影響していた。

「さまざまな人々が、しっかりと力強く生きている姿に尊敬の念を抱きましたよね。逆にオフィスで働くスーツ姿のホワイトカラーには魅力を感じなくなっていたというか、自分だけの技術と信念を抱きながら、一人の人間として自分の人生を切り開いていきたいと強く思うようになったんです」

 近江を強豪校へ育て上げていく決意は、チームスローガンの『Be Pirates』に凝縮されている。和訳すれば「海賊になれ」となる、ちょっぴり物騒に聞こえる言葉に込めた思いは熱く、そして深い。

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