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Jリーグ 2か月前

名古屋グランパスの方向性は正しい。しかし…。ボール保持・非保持の制度設計から「粗」が浮かび上がる【戦術分析コラム】

シリーズ:戦術分析コラム text by らいかーると photo by Getty Images

名古屋グランパスの粗。「ボールを保持するサッカーの肝」は…



 そんな時代の決勝戦で事件が起きる。リードしたレアル・マドリードがアトレティコ・マドリードにボールを持たせる作戦に出たのであった。どの局面のかみ合わせが自分たちにとって優位かを多くのチームが意識するようになり、何が何でもボール保持にこだわるチームはどんどん減っていった。ボール非保持で優位を持つチームがボール保持に取り組むようになったきっかけはこの試合の内容からだと、個人的には確信している。

 今季の名古屋は、試合の展開によってボール保持、非保持のどちらかに偏ることはあれど、両方の状況においてチームに優位性を引っ張ってこられるように取り組んでいるように感じる。この方向性は正しすぎるくらいに正しい。しかし、どちらの局面の噛み合わせにおいても少しの粗を感じさせることも事実なのだ。今回はその粗について考えていきたい。

 名古屋のボール保持は多くのギミックを含んでいる。左ウイングバックで起用された和泉竜司は同サイドのシャドウの個性によって内側、外側の立ち位置を巧妙に使い分け、シャドウで起用されることの多い森島司はチームが必要とするエリアへのサポートをプレーエリアに関係なく移動する自由を持ち、3バックの一角で起用された内田宅哉は右サイドバックの役割をこなしているかのようなプレーをすることができる。

 ボールを保持するサッカーの肝はセンターバックたちを起点とする攻撃で、前列にいる味方に時間とスペースを届けられるかだろう。具体的に悪い例を出すと、センターバックがフリーの状態にも関わらず、相手が側にいる、もしくは相手を背負っている中盤の選手にパスを出すことは得策とは言えない。理想的な状態はフリーのセンターバックがボールを運び、中盤の選手をマークしている相手の選手に対して、「ドリブルとパスのどちらを警戒すべきか」の2択を叩きつけられるかどうかだろう。

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