日本とドイツでは「別競技」。Jリーグに復帰した選手の違和感の正体

【図1】
日本のサッカーは、相手のプレスを掻い潜り解放された場面で、海外なら確実にできるだけ速くボールを相手ゴールに運ぶタイミングでも、一気に攻め上がらないということです。まずボールを落ち着かせる……そこで起こる現象は、せっかく手薄になった相手の陣容を突くことをしないので、容易に帰陣させ再びマイボールの前に11人の相手選手を置くことになる……。
「ボール非保持時編」の復習をするなら、「Fallen」(ファレン:戻れ!!)→「Ordnung」(オールドヌング:陣形を整えろ!!)から「Vorwärtsverteidigen」(フォアヴェアツフェアタイディゲン:前面からアタックする)できる状況に再びされる……。私自身も2025年に日本の南国で練習試合を複数回観ましたが、やはり同じようなプレーが散見されました。
さらにスプリント回数の話も興味深いものでした。彼はヨーロッパでは前半だけでスプリント回数は20回弱を記録していたようですが、日本では数本しかなかった事実に驚いていました。もちろんまだ公式戦が始まる前の練習試合とはいえ、違和感をもっても不思議はないでしょう。それはまさに「別競技」と言える事象であり、試合の強度につながる事象です。
ボールも人も行き来が激しく、攻守があるのかないのかさえ分からないダイナミックなサッカーと緩やかで攻守が野球的なサッカーでは、前述したようにJリーグの日本人選手の評価が難しいというのも理解できます。
ただし、サッカーの内容に対する嗜好については、個々それぞれであり尊重されるべきものです。この好き嫌いは国民性に関連性があると私は考えています。
「BoS」的ボール保持時ではその性質上、牧歌的なサッカーと対称的です。競争ではなく闘争としてのサッカーの攻撃であり、直線的に愚直にゴールを目指し、情熱的でエキサイティングである。ドイツでは血が滾るようなサッカーをファンはスタジアムで期待します。それは現代化したコロシアムと言えるかもしれません。
スタジアムの雰囲気の明らかな相違からも分かるように、日本の平和的空間を望む方には「ボール非保持時編」でも言ったように本連載は相応しくないでしょう。ゴールを奪うことを念頭に闘うサッカーがお好みの方は、ぜひ泥臭くお付き合いいただけたら幸いです。
(文:河岸貴)
『サッカー「BoS理論」 ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法』
カンゼン・刊
河岸貴・著
ボールを中心に考え、ゴールを奪う方法論「BoS(ベーオーエス)理論」(Das Ballorientierte Spiel:ボールにオリエンテーションするプレー)が足りていない日本サッカーの現状に警鐘を鳴らす。ドイツ・ブンデスリーガの名門シュトゥットガルトで指導者、スカウトを歴任した著者が、日本のサッカーの現状を直視しながら、「BoS理論」におけるボール非保持時の部分、「Ballgewinnspiel:ボールを奪うプレー」の道筋をつけた一冊。
【了】