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Jリーグ 8か月前

ルカオはなぜ子どもの心を掴むのか? ファジアーノ岡山の「心優しき重戦車」のルーツは「悲しかった」少年時代の記憶【コラム】

シリーズ:コラム text by 難波拓未 photo by Getty Images

ルカオがとった行動「サポーターの力を借りたくて…」

 
「監督に指示されたのは、常に背後を狙うことと、前線で起点を作ること。ピッチに入った瞬間に拍手と声援が大きくなったことを感じたし、本当に力になりました」

 リーグ戦では4試合ぶりに途中出場となった背番号99は、追い風を味方にしながら自身の力を最大限に発揮。ファーストプレーではスローインを受けてから右サイドを突破してクロスを蹴り込み、背後へ抜け出すアクションで相手の最終ラインを押し下げる。

 そして、61分だった。左サイドに流れてスローインのターゲットになると、DF白井康介の前でボールをフリック。このプレーを起点に相手陣内で混沌が発生し、中途半端なクリアを拾った田部井がスーパーゴールを叩き込み、岡山が先制に成功した。

 岡山は1点のリードを得ても守りに入らない。前線からのプレスと縦に早い攻撃で、FC東京に圧力を掛けていく。その先頭に立っていたのも、ルカオだった。

 69分には右サイドの深い位置でパスを受けると、寄せてくるMF高宇洋を背中でブロックしながら足裏でボールをなめるようにタッチするドリブルで最奥に進入し、MF安斎颯馬にボールをぶつけてCKを獲得。追加点のチャンスを広げた後、バックスタンドの応援エリアに向かって両手で盛り立てるジェスチャーを披露し、スタジアムのボルテージを最高潮に高めた。

「相手選手やチームメイトに自分の力を示したいし、『もっと行こう!』とチームをさらに勢い付けるためにサポーターの力を借りたくて煽りました」

 88分にも圧倒的なフィジカルを生かしてCKを獲得した。DF柳育崇のクリア気味のロングボールをピッチ中央で収め、トップスピードに乗って右サイドから突き進む。約25mを持ち運ぶと、左手と背中でDF木村誠二を背負ってボールキープし、外側を駆け上がってきた味方にタイミングよくパスを出した。

 反撃を狙うFC東京を押し下げながら、2点目のチャンスを生み出す。その状況を作れる能力は唯一無二。最後までチームのスタイルを体現するうえで非常に重要な役割を果たし、1-0の勝利に貢献した。

 “身体能力任せ”ではないのがルカオの良さであり、状況に応じて最適なプレーを選択できる判断力は岡山でひたむきに取り組んで身につけたもの。2023年2月の加入時からずっと一緒に過ごしてきた指揮官もチームメイトも、その成長を認めている。

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