「チームとしてそんなに余裕があるわけではないです」
中盤で見木がボールを奪い、紺野和也にパス。彼からナッシム・ベン・カリファへと渡り、右サイドを上がってきた前嶋につながった。次の瞬間、ゴール前に見木が侵入。右からの折り返しを確実に仕留め、待望の2点目をもぎ取った。
これで福岡は2−1で勝利。勝ち点を「19」に伸ばし、暫定首位に浮上。クラブ創設30年にして初のトップに立ったのである。
「ただ、今の福岡はチームとしてそんなに余裕があるわけではないです。全員が全力でやってる結果というか、本当に手を抜かない。1人1人が100%を出して結果が出ているんだと思います」と藤本は神妙な面持ちで語っていた。その「全員が100%」という部分は、昨季J1で旋風を巻き起こした町田に通じるところだ。
「町田もみんな100%やりますけど、福岡の方が攻撃が柔軟で、選手に任されている部分が多い。アイディアある選手も多いですし、それを生かしながらやっているんで、そこは昨年の町田とは違うかなと感じます」とも彼は話していた。
確かに今の福岡は最前線だけでシャハブ・ザヘディ、ベン・カリファ、ウェリントンというタレントが並び、2列目要員も紺野や名古、岩崎、ベテランの金森健志など優れた選手が揃っている。
金監督もそういった個性を生かそうと自主性を尊重している。開幕3連敗の時はシンプルにタテに蹴り出すスタイルも取り入れ、修正を図ったという。
その一方で、この試合を見る限りでは、マリノス相手にしっかりとしたビルドアップで攻撃を組み立て、フィニッシュまで持ち込む形も多かった。その進化に指揮官も選手たちも手ごたえをつかんでいる様子だ。
この調子で上位をキープするためには、堅守を維持しつつ、より多くのゴールを奪うことが重要だ。藤本もやっと記念すべき一歩を踏み出したが、ここから2ケタゴールを目指して数字を重ねていく必要がある。
慣れ親しんだ福岡で家族や指導者など関わった人たちが見守る中、グイグイと成長していければ一番いい。気鋭のドリブラーが一気にブレイクするのを楽しみに待ちたいものである。
(取材・文:元川悦子)
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