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Jリーグ 2か月前

「だったら、いつもどおりで…」ジェフ千葉、鈴木大輔は思い出していた…1年前の屈辱を。自然と上回った危機感の正体【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典

「プレーで何かを変えられるタイプではない」

「自分の課題はリーダーシップでしたし、移籍した決め手として大輔さんがいるということもありました」

 そして、実際に間近で見る鈴木大は、予想していた以上に存在感があった。

「今まで周りに大輔さんほど努力している人はいませんでした。すごくお手本になる選手ですし、いいところを盗もうと思いながら見ています。自分にも違った良さがあるとは思っていますし、ポジション争いに勝っていくつもりですが、今は完全に『それは出られないよね』と自分に突きつけられている感覚です」

 鈴木大と河野が交代した直後、千葉は失点を喫した。FKからの流れではあり、吉田源太郎がクリアしようと試みたボールが自陣ゴール前に飛んでしまうアクシデントもあった。だが、一旦ボールを跳ね返したあともラインを上げきれず、相手の攻撃に対してズルズル下がってしまったことも大きな要因だった。

 ラインコントロールはまさに鈴木大がこだわっていることであり、チームにとっては昨季の左アキレス腱断裂の重傷で彼が戦列を離れた時期と今季との大きな違いだ。

「特別にプレーで何かを変えられるタイプではない」

 鈴木大はそう自己評価する。だからこそ自身のことを考えるだけではなく、チームメートが力を発揮できるよう整理することに注力する。

「ピッチ内外でみんなの特徴を引き出すようなことは意識しているし、ベテランの選手が若い選手に気持ちよくプレーしてもらえる環境を整えられるかということが一番大事だと思っています」

 そのひとつがラインコントロールだ。スペースを消すことだけではなく、中盤や前線の選手が効率よくプレーできるように全体をコンパクトにすべく、最終ラインを上げる。

 経験の浅い選手は自分と相手の力関係を考慮してラインを下げてしまうことがあるが、鈴木大は違う。

 背後を取られる、または難しい状況での1対1の対応を求められ、最終的に失点して自身が批判対象になろうが関係ない。それを受け入れる度量や精神力があり、何よりチームを最優先に考える。彼がピッチを去った後に喫した失点は、却ってその存在感の大きさを際立たせた。

 次節の対戦相手はロアッソ熊本。秋田とはスタイルが全く異なるチームだが、千葉にとっては共通点がある相手だ。

「1試合1試合ですよ。次の熊本も昨季はダブルを食らっていますからね。楽しみですね」

 退いたあとの失点でも自分ごとのように悔しい。チームとしても個人としても、やらなければならないことはまだまだあると考える。

 それでも、今回の秋田戦後の鈴木大の表情には、1年前とはまるで異なる充実感が溢れていた。

(取材・文:菊地正典)

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【了】
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