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Jリーグ 7か月前

ヴィッセル神戸に生じた小さな歪み。本多勇喜が絞り出した言葉を無駄にしてはいけない。「僕自身もそうですけど…」【コラム】

シリーズ:コラム text by 藤江直人 photo by Getty Images

本多勇喜は気持ちを切り替える。「連敗してしまったことはダメですけど…」

「キーパーなら誰しもが思うことですけど、最悪のケースを常に意識して、そうなったときにはしっかりと止める。ああいう状況だからこそ(本多を)カバーしてあげたい、という思いがあるので」

 しかし、キッカーを務めたマルセロ・ヒアンのPKは、右へダイブした前川の逆を突いてゴールの左隅へ突き刺さった。アディショナルタイム13分に決まった劇的な先制ゴールが決勝弾となり、神戸が今シーズンで初めての、昨シーズンを通じても昨年5月以来、約1年ぶりとなる連敗を喫した。

「本当に次につなげるしかないですし、終わってしまったことはもう戻らないので。次へ向けてしっかり準備するしかない。連敗してしまったことはダメですけど、切り替えてやるだけだと思っています」

 必死に声を絞り出す本多へ、こんな質問も飛んだ。最後の場面で、逆に自軍のゴールまでよくカバーに戻ったのでは、と。それでも、本多は自身を含めて、カウンターを招く隙があったと振り返った。
「うーん、でも最後は相手キーパーの一本のパスであそこまで来られたので。僕自身もそうですけど、しっかりとアラートしながらプレーするべきだったと思っています」

 京都サンガF.C.との契約が満了になった2022シーズンのオフ。32歳になる直前だった本多は、神戸から届いた望外のオファーに心を震わせた。驚異的といっていい身体能力の高さを見込まれたレフティーは、左サイドバック(SB)に加えて左センターバック(CB)でもフル回転。声をかけてくれたチームへの感謝の思いをいぶし銀の輝きを放つパフォーマンスに変えながら、神戸の連覇を縁の下で支えてきた。

 身長は173cmとCBとしては決して大きくない。それでも垂直跳びで1mを記録した、といった都市伝説をもつ本多の存在感は、1-0で勝利した4月20日のFC町田ゼルビア戦で際立った。左CBでフル出場し、身長194cmの韓国代表オ・セフンを空中戦で封じた守備に吉田孝行監督がうなった。

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