強く思う。「その1本、俺がいきたいんです」
自信を持って選択すべきプレー。その一つが柏戦でも頻繁に見せたターンであり、前進である。ただ、すべきだったにもかかわらずできなかったプレーもあった。
「何とかシュートを打ちたかったんですけど」
舌打ち混じりで言葉を発しながら、山根は唇を噛んだ。
シュートを打つこと、さらには自らがゴールを決めることは、一つひとつのディテール同様に山根が意識していること。シーズン途中のため単純比較はできないが、実際に1試合平均シュート数はルーキーイヤーの2022年から0.3、0.2、0.5と続き、今季は0.6と過去最高を記録している。
この試合でもシュートを打とうと意識していたのだが、疲労が右足を振らせてくれなかった。
「もうどうなってもいいや」
その思いでプレーした結果がチームに勢いをもたらしたものの、ピッチに入った瞬間からフルパワーを出した代償もあった。
それでも、何とかシュートを打ちたかった。打てば何かを変えられるかもしれないと思っていたからだ。
「チームとして1本入れば全然違うと思うんです。よくないときって全てがうまくいかないですけど、1本入れば」
そして、強く思う。
「その1本、俺がいきたいんです」
次節の京都サンガF.C.戦は、柏戦から中2日。ホームゲームが続くとはいえ、同じメンバーで戦えるはずはない。この試合でのプレーを見れば、山根が3試合ぶりスタメン出場は十分にありえる。
負の流れを断ち切る。「その1本」を決める。表情は穏やかになったと思っていたが、次を見据える山根の視線は鋭いままだった。
(取材・文:菊地正典)
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