苦しむ古巣の現状に「マリノスらしくなくなっているのがショック」
「マリノスと対戦していて、やはりサッカーはメンタルが大事なんだとあらためて思いました」
目の前ではクラブワースト記録を更新するリーグ戦7連敗を喫し、こちらもワースト記録となる同一シーズンにおけるリーグ戦11戦連続未勝利(2分け9敗)と泥沼にあえぐかつての盟友たちがいた。
マリノスとの今シーズン初対決を前にして、扇原は「ショック」という言葉を介して最下位に沈む古巣の現状に言及していた。実際に対戦を終えた扇原は「ショック」に込めた思いを明かした。
「マリノスが最下位にいる現状に対してのショックというよりも、マリノスらしくないというか、マリノスらしくなくなっているのがちょっとショックというか。これまではアタッキングフットボールと呼ばれる、Jリーグでは唯一無二といっていい攻撃的なサッカーをしていたチームではあったので」
扇原自身もアタッキングフットボールのもと、プロサッカー人生で初めてリーグ制覇を経験している。名古屋からマリノスへ加入して3年目の2019シーズン。アンジェ・ポステコグルー監督のもとで、ハイラインとハイプレスを徹底したマリノスは圧倒的な攻撃力で15年ぶり4度目の優勝を果たした。
総得点「68」だけでなく、得失点差「+30」もともにリーグ最多。仲川輝人とマルコス・ジュニオールがJリーグ史上で初めて同じチーム内で得点王を分け合い、仲川はさらにシーズン最優秀選手賞も獲得。文字通り日本サッカー界を席巻したマリノスで、夏場からボランチに定着した扇原も25試合に出場した。
5年間所属したマリノスから神戸へ移籍した2021シーズンのオフ。2019シーズンのリーグ優勝を「僕にとって一生の宝」と位置づけた当時の扇原は、マリノスを通じてこんなコメントを残している。
「この5年間で、チームとはどういうものなのか、本当の意味で学ぶことができました。(中略)チーム一丸と言葉で言うのは簡単ですが、それを実際にできるのはF・マリノスの強みです」
扇原がマリノスに抱く畏敬の念は、神戸の一員になって4シーズン目のいま現在も変わらない。慣れ親しんだ日産スタジアムでの一戦を終えた後には「やはりマリノスが相手だと、特別な気持ちがあります」と思いを打ち明けた。だからこそ「ショック」という言葉があらためて脳裏に浮かぶ。扇原が続ける。