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Jリーグ 2週間前

横浜F・マリノスが「どういうクラブか」その答えを、喜田拓也は先頭に立って見つけていく。「笑い者にされてもいい」【コラム】

シリーズ:コラム text by 菊地正典 photo by Getty Images

「本当にもがいて、もがいて…」。この勝利を「味わってもらいたい」

 その人たちの思いも背負ったのだろうか、鹿島戦ではピッチに立つ全員から何かを変えようとする気持ちが感じられた。みんなが走っていた。みんなが闘っていた。

 試合終了直前にベンチ前でピッチを見つめる交代した選手や出番を得られなかった選手たちもそうだった。ある者はピッチに大きな声を送り、ある者は祈るようにピッチを見つめる。チームの一員である責任が感じられた。

「このチームが本物かどうか試されている」

 首位との一戦を迎えるあらゆる状況からそう感じていた喜田も、セカンドボールへの素早い反応や前を意識したパスで2つの得点の起点になった。思いを言葉だけではなくプレーで示し、勝利に大きく貢献した。

 試合後、サポーターからのコールを受けた喜田は、拍手を返したあと、ゴール裏に向けて両手を差し出した。そのジェスチャーを繰り返す。何度も、何度も。

「本当にもがいて、もがいて、それでもみんなで苦しい中で歯を食いしばって進んできた。選手、スタッフ、クラブに関わるすべての人、そして何よりも、ファン・サポーターの方たちも苦しみながら一緒に戦い続けてくれたので、彼ら、彼女らに捧げたい1勝です」

 そして続ける。

「少しでも喜びやうれしさを味わえるのであれば、味わってもらいたい」

 味わってもらいたい? どこか他人事だ。一緒に味わいたいのではないのか。そもそも喜田自身は喜びやうれしさを味わっていないのか。

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