「『何やっているんですか』と面と向かって言いたいけど…シゲさんにもいろいろとあったわけだし…」
「大人が大きな決断をしたあとに軽々しく連絡なんて取れないし、お疲れさまでした、と言うのもおかしい。時間がたって落ち着いたら『飲み行きますか』と連絡したいし、そのときには俺も『何やっているんですか』と面と向かって言いたいけど…シゲさんにもいろいろとあったわけだし、そのなかでシゲさんが最終的に決めたわけですから、もうああだ、こうだと言わずにしっかりと受け受け止めて次へ進むしかないですね」
言葉ではなくプレーで、右肩上がりに転じていくマリノスの軌跡で示す。町田戦の78分。2点をリードしていた状況でFWナ・サンホ、FWオ・セフンの至近距離からのシュートを立て続けに、執念をほとばしらせながらセーブした飯倉の姿は、松永さんへのメッセージが込められていたように思えてならない。
「個人的にも止められてよかった。チーム的にも失点したら、難しい時間になったかもしれないので」
自身のプレーを振り返った飯倉は、松永さんに関する質問が続いた囲み取材には思わず苦笑した。
「語彙力がなさすぎて言葉にできないよ。そこはみなさんの仕事で、マジでうまくやってください」
町田戦から一夜明けた6月1日に飯倉は39歳になった。2000シーズン限りで現役を退いた松永さんが、最後の所属チームだった京都パープルサンガ(現:京都サンガF.C.)で指導者の道を歩み始めた年齢だ。熱さと円熟味を同居させたプレーでマリノスを支え、最下位から残留圏へと導いていく仕事が、師匠へ捧げる唯一無二の恩返しとなる。
(取材・文:藤江直人)
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