石原広教のプレーが埼玉スタジアムを沸かせた
チームがペナルティーエリア付近でボールを失った直後、右サイドに出たボールに猛然とプレスを掛ける。相手に体をぶつけ、倒れながらも粘り、相手を弾き飛ばしてマイボールにした。
このシーンは得点シーンを除けば、いや、得点シーンと同じように、この日の試合中に最もスタンドが沸いた瞬間だった。
FCWCに参加するため試合を前倒しで戦うこともあった浦和にとって、横浜FC戦は21試合目。石原にとっては13試合目のスタメン出場だった。
石原が今季初めてJ1リーグでスタメン出場したのは、第8節の清水エスパルス戦。それまでの7試合ではたった1試合、10分しか出場していなかった。
その数字が示すように、石原にとってここまでの道のりは決して平坦ではなかった。
浦和加入1年目の昨季は30試合に出場し、そのうち27試合でスタメン出場した。レギュラーと呼べる十分な成績を残したと言ってもよかったのだが、昨季はポジションを奪ったというよりも、アクシデントにより回ってきたという表現が正しかった。
シーズン前半は酒井宏樹のケガ。後半は酒井の移籍。石原自身、レギュラーだった湘南ベルマーレを離れて浦和に移籍した大きな理由のひとつに世界を経験している酒井の存在があったのだが、予想外の展開でもあった。
そして、今季の開幕前、石原はときに練習でのゲームから外された。前年のほとんどの試合に出場した選手がレギュラー組と見られるチームでプレーできないばかりか、ゲームに参加できないことなど通常ではありえない。
だが、石原は焦らなかった。チャンスはいつか来るという気持ちがあったことに加え、指揮官の信頼を得るほどのプレーができていなかったと感じていたからだ。