佐藤龍之介と指揮官が交わした言葉「練習で…」
「(加藤)聖が今日はプレーすることができなかったので、誰を左に使おうかと考えた時にいくつかアイデアはあったし、練習で試しましたけど、(松本)昌也を本来の右に置いて、佐藤を左に回した時がトレーニングの中で一番良かった。あとは相手の強力なウイングの選手をできるだけ攻撃で押し込めたいっていう意味も含めたら、彼が一番、左に適任なのかなと思いました」
イレギュラーにもかかわらず、18歳はいとも簡単に適応してみせた。キレのあるドリブルで突破し、江坂任や神谷優太とテクニカルな連係を繰り出す。特に前半は攻撃力と連続性で、サイドの主導権を掌握するパフォーマンスを見せた。試合後に「特に指示はなかったです。練習で『左、行けるか?』と言われて、『行けます』と言ってやりました」と口にするから大したものである。
後半は横浜F・マリノスがギアを上げてきたことで、守勢に回らざるを得なかった。佐藤も5バックの一員として耐えるシーンが続いたが、「かなり夏場特有の環境を感じました。その中でも工藤(孝太)選手がしっかりと身体を張りながら自分を動かしてくれたのでやりやすさはあった。自分としては体力を90分やろうという気持ちではなく、100%を出し切って次のオプションにバトンを渡すイメージだったんです」と、自分の責務を全うした。
サッカー日本代表にも初選出された後輩からバトンを受け取った本山は、チームメイトを鼓舞しながらピッチに駆け出す。移籍後初出場となった前節のアビスパ福岡戦はボランチでの起用だったが、今節はベンチから最も遠い左WBの位置に入った。左サイドでのプレーは、今季の開幕時に所属したヴィッセル神戸でのデビュー戦となった「FUJIFILM SUPER CUP2025」以来で、実に4カ月ぶりだった。
プレーするサイドが変われば、身体の向きやボールを置く位置なども変わるため、難しさはある。さらに本山は神戸で思うように出場機会を得られず、J1リーグには1試合も出場できなかった。試合勘を取り戻すことの必要性も意識していただろう。しかし、そんなものがちっぽけに感じるほど、木山監督が絶大な信頼を寄せている。