堀米悠斗が思い描いた場面「意図はしっかりと伝わっていた」
「チームの狙いとして、というよりも、ボランチがひとつ落ちたときにできるスペースを個人的には狙おうと思っていた。稲村選手にしても(ボランチの)新井選手にしても、(利き足の)左足で外をにおわせながら中にパスを刺せる選手なので、チャンスがあれば中のハーフスペースでパスを受けようとも」
思い描いた通りの場面が訪れたのは、1点を追う30分だった。稲村がバックパスを送ったゴールキーパーの田代琉我へ、川崎の選手たちが前からプレスをかける。自陣のバイタルエリア付近に生じたスペースへ下がったボランチの新井泰貴が、田代からパスを受けて振り向いた直後だった。
ハーフスペースでフリーになっていた堀米へ、新井の左足から完璧な縦パスが入った。ハーフウェイラインからわずかに敵陣に入ったエリア。利き足の左足からアーリークロスを放った意図を堀米が明かす。
「あの時点まで背後へのパスであまり勝負していなかったので、個人的には1本出したいという思いがあった。ノーバウンドで、というよりはちょっと巻きながら、相手のゴールキーパーが出られないところを狙った。ちょっと奥へいきすぎたかなという感じだったけど、意図はしっかりと伝わっていた」
カーブの軌道がかかったクロスは川崎の両センターバック、ジェジエウと高井幸大の間で弾み、さらに後方を通過してファーサイドへ。膨らむようなコースを取って走り込んできたFW小野裕二がワンタッチで右足をヒットさせたボレーシュートは左ポストに嫌われ、同点に追いつくチャンスが潰えた。
敵地の夜空を見あげ「あれが入っていたら、また違う展開になっていたかもしれない」と振り返った堀米は、だからといって小野をはじめとする攻撃陣を責めない。試合後にはこんな言葉を紡いでいる。