「本当に僕らの生命線はそこなんで」

「2週間、試合がなかった。たとえきれいな形じゃなくてもどれだけ相手陣地に迫っていけるかは意識してトレーニングしていたし、奪われた後の守備の速さは準備していたものを出せた」

　鈴木雄斗は「パーフェクトじゃないですけど」と付け加えたが、チームの出来に一定の手応えを感じていた。そのパフォーマンスは、クラブ史上初の開幕3連勝を達成したときを彷彿とさせた。

　肝は失った後の意識にあった。

「失った後のダイレクトプレスで近くの選手がいくためには、距離感が良くないといけないし、前のアクションのときに近くの選手がついて行ったり、追い越す意識がないと難しい。攻撃に厚みを出すとか、ゴールに迫っていく。（そのために）後ろの選手がアクションを起こしている選手を見るとか選ぶとか。そうやれたことが良かった」

　ウイングバック（WB）が下がって最終ラインからパスを受けようとすると、インサイドハーフが相手のサイドバックの裏に走る。2トップの一角が楔のパスを受けるときに、もう一方のFWは裏に抜ける。パスの出し手と受け手の関係だけではなく、3人目、4人目、5人目と近くにいる選手たちが有機的につながることで崩していく。前半の湘南はそれをピッチ上で表現できていた。

　守備面でも同じだった。「本当に僕らの生命線はそこなんで」と鈴木雄斗は言う。

　マリノスのストロングであるヤン・マテウスとエウベルはタッチライン際まで開いてボールを待つことが多い。その際、湘南の5バックがベタ引きになってしまうと、中盤は数的不利になる。彼らを湘南のWBが見るのか、ストッパーが見るのかを細かく受け渡しながら守っていた。

「今日も前半は凄く声が出ていたし、みんなが主体的に守備も攻撃もできていた」

　だからこそ、失点シーンは悔いが残る。

　鈴木淳之介が相手と接触して負傷し、プレーが止まった。このとき、鈴木雄斗は「シンプル（なプレー）でいいかもしれないね」とGK真田幸大と話していたという。その直後、小さなほころびが生まれてしまう。