「あの瞬間にはもう、シュートの意識しかなかった」
しかし、そのリバウンドをマテウス・サヴィオが拾って左に流れた金子に渡す。左足のクロスに渡邊が飛び込むが、森重真人と競り合ったところでわずかに合わず、室屋が咄嗟にクリアしたボールを巡って、安居と俵積田晃太がイーブンボールを奪い合う形になった。
「ちょっと遅れたかなと思ったんですけど。あそこでボールが入れ替わらずに、前に転がったから。あの瞬間ではもう、シュートの意識しかなかった」
安居がそう振り返るように、一瞬、俵積田が先に触ったようにも見えるが、セカンドボールの奪い合いに優れる安居がうまく絡めとる形で、前にボールを転がすことに成功した。
見事だったのはそこから間髪入れないタイミングで、迷うことなく右足を振り抜いたことだ。地を這うような弾道がゴール右隅に突き刺さった場面について、安居は「感覚はそこまで覚えてない」というが、シュートを狙う意識には間違いなくCWCの経験がプラスに働いていることを明かした。