樋口雄太がラスト15分に発揮した知性と柔軟性
この時点で樋口はまず左MFに入ったが、79分に三竿健斗と溝口修平が変わると、ボランチの位置に移動。知念と組んで中盤の強度を引き上げると同時に、虎視眈々とチャンスを窺っていた。
それが訪れたのが、81分。田川が奪った右サイドからのスローインを小池龍太が投げ、鈴木優磨がキープ。小池、知念と渡り、樋口がいい位置でボールを受け、スルスルと前線に上がりながら、鈴木優磨に絶妙のパスを送ったのだ。これを背番号40がゴール前に折り返し、飛び込んだのが田川。背番号11は慣れ親しんだ味スタで左足を一閃。値千金の決勝弾を叩き出す。
この一撃で抜け出した鹿島は虎の子の1点を守り切って、しぶとく1−0で勝利。中断前に首位に立っていたヴィッセル神戸が敗れたことで、再び首位の座をつかむことに成功したのである。
殊勲弾を挙げた田川を筆頭に、知念、松村と交代選手が力を発揮したこの試合だったが、樋口の戦術眼と的確なポジショニングも大いに目を引いた。
彼はボランチ陣の中では唯一、2列目もこなせる選手。この日も最初はサイドに入り、ボランチに移動したが、多彩かつ臨機応変なプレーが鬼木・鹿島に1つのアクセントをもたらしているのは確かだ。