「そこを言い訳せずに勝ち切っていくチームが最終的には優勝する」
「そこを言い訳せずに勝ち切っていくチームが最終的には優勝すると思っているし、こういう厳しい試合で点を取ってこそ自分の存在意義がある。その意味でも、セットプレーで自分がもっと相手の脅威にならなければいけなかった。点を取れなかったのは正直、試合に出ている意味がないくらいのレベルだと思う」
自らを厳しく責める理由がある。昨シーズンまでヴィッセル神戸に所属した菊池は、右膝の後十字靱帯と左膝の前十字靱帯を立て続けに損傷した影響でリーグ戦連覇にほとんど貢献できなかった。迎えた今シーズン。復活を期して、青森山田高校時代に指導を受けた恩師、黒田監督に率いられる町田へ移籍した。
しかし、3バックの真ん中で先発したサンフレッチェ広島との開幕戦で、菊池は右太もも裏の肉離れで後半開始早々に退場。3月下旬に戦列復帰するも、4月9日のヴァンフォーレ甲府とのYBCルヴァンカップ・1stラウンド2回戦で、今度は左太もも裏の肉離れで退場。長期離脱を余儀なくされた。
「悔しさ以上の思いがありました。大好きなサッカーができない状況がこんなにもつらいのか、と」
前半戦をこう振り返った菊池は、復帰が近づくとともにこんな思いを抱くようになった。
「チームが勝てていなかったなかで、自分が戻れば何とかなる、自分が主役になるんだ、と」
菊池の性格を熟知する指揮官は、身長188cm・体重80kgの巨躯を武器にする愛弟子へ、エアバトラーとは別の役割も託した。それは「盛り上げ隊長」。物怖じしない度胸のよさと屈託のない明るさは、1月の今シーズンの始動日に開催されたミーティングでの自己紹介ですでに新天地の仲間たちを大爆笑させていた。
「青森山田高校から来ました菊池流帆です。よろしくお願いします」
空中戦でヘディングを見舞う刹那に「よっしゃぁーーーーーっ」と絶叫し、ピンチを防いだ直後には派手なジェススチャーを介してゴール裏に陣取るファン・サポーターを煽る。性格だけでなくプレースタイルも「盛り上げ隊長」でもある菊池は、6月上旬に復帰した練習中にピッチ上でこんな叫び声をあげはじめた。