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代表 10年前

大逆転でワールドカップ進出を決めたフランス 勝負を決めた“メンタル”と“戦略”

text by 小川由紀子 photo by Kazhito Yamada / Kaz Photography

「その男は運が強いか?」

 キャバイエは本来、より前でプレーする選手だが、中盤の底での配球役がぴたりとはまり、所属するPSGでも同じポジションをこなすマテュイディは、横に並んだポグバとのバランスもよく、攻撃の厚みが第1レグより格段に増した。4試合ぶりに先発に復帰したベンゼマも得点で指揮官の信頼に応え、さらに怪我の功名とでも言うべきか、第1レグで退場処分になり、出場停止だったCBコシエルニーに代わって出場したサコが、大金星の先制点。

 3点目も、記録は相手のオウンゴールだが、サコがゴール前に突っ込んだのをカバーリングした際のエラーだった。(編注:その後、サコのゴールとFIFAが訂正した)

 苦し紛れの策が功を奏してしまう、というのには、才覚もあるが、それにも増してデシャン監督は強運だ。そして運が強いことは、とても重要な素質でもある。

 ナポレオンは部下を選ぶとき「その男は運が強いか?」と必ず尋ねた、という逸話があるが、このエピソードを敬愛していたのは、あの名将、サー・アレックス・ファーガソンだ。

 晴れてW杯通過を決めたフランス代表だが、これでようやく国民の人気を回復したか、と思いきや、フランスのメディアが(懲りずに)再度、アンケートを行ったところ、「フランス代表に悪いイメージを持っている」と回答した人たちは、前回の82%からわずかに3%減っただけ。いまだに約8割がネガティブな印象を持っていることがわかった。

 これは少し意外だったが、この結果を報じたパリジャン紙は、「まだまだ人気回復には時間がかかりそうだ」とやや悲観的になったのと同時に、

「フランス人は、バーサタイルではないので、ひとつの出来事で簡単に自分の意見を変えたりしないのだ」と分析していた。

 敗退していたら、いったいどんな数字になっていたのかと考えると恐ろしいが、とにもかくにも、レ・ブルーは、ブラジルに向けて一歩を踏み出した。

【了】

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