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【特別対談】加部究&幸野健一:理不尽が横行する高校サッカーの非常識。真の「プレーヤーズ・ファースト」が浸透するために必要なこと(その1)

シリーズ:【特別対談】加部究&幸野健一 text by 森哲也 photo by editorial staff

コーチも含めてイエスマンで固めてしまう

――指導者の問題以前に、根本の部分から考え直す必要があるということですね。

幸野 そうですね。だからある意味今の指導者、先生たちは“被害者”でもある。加部さんが仰ったように指導者を評価するシステムがない。例えばスペインだったらスポーツディレクター(SD)がいて、指導者を評価するシステムがきちんとあるわけです。

 Jクラブでも必ず社長がいてGMがいて、(指導者が)クビになったりするケースだって当然ある。そういう機能が働かないから、どうしても裸の王様になりがちですよね。先生がすべて悪いというより、システムに問題があると僕は思うんですよね。

加部 教育現場だとある程度学校の先生が知識を持っていてそれを生徒に教え込むみたいな状況にあるんだけれども、サッカーの場合は子供たちがどんどんいろんな知識とか情報を吸収していて、書籍で書いたA君のように不勉強な監督より遥かにレベルの高い知識を備えているケースが起こりうる。

 そういう状況で大所帯をまとめていこうとすると、無条件で従わせるシステムを作らないと無理なわけです。子供たちが監督に疑問を投げかけたらもう収拾がつかないし対応ができない。だからコーチも含めてイエスマンで固めてしまう。

 実際、A君が在籍した高校では指導者が全部OBで固められていた。監督は何年間も同じことしかしていないような人なので、おそらく新しい情報は一切入れていない。一番ギャップが大きいのはJユースなどJクラブで育ってきて高校のサッカー部に入った子たちです。彼らは戦術的な知識や練習法など、既にいろんな新しいことを知っているわけです。

――実際、アンケートでも高校の旧態依然のやり方を指摘する声が多かったです。

幸野 それはいわゆる学ばない指導者ですよね。僕もこの仕事をやっていて例えば畑喜美夫先生(安芸南高校サッカー部監督)との対談とかSNSをやっていると、指導者がものすごく変わってきてるなぁと思うんです。

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