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ポジションの概念を“消した”ペップ・バイエルン。敵地でも73%のボール保持、なぜこんなにも強いのか?

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

アーセナルを自陣に閉じ込めるほどの圧倒

ポジションの概念を“消した”ペップ・バイエルン。敵地でも73%のボール保持、なぜこんなにも強いのか?
ゲッツェやミュラーが前線に進入し、ディフェンスラインを揺さぶり続ける【写真:原田亮太】

 そして37分、クロースとのワンツーで前線に飛び出したロッベンがPKを獲得する。アラバは外した。が、PKという絶好のチャンスを逃したことですら、些細なことに思えてしまうような異次元のサッカーを、前半を通してバイエルンはピッチの上に描き続けた。選手たちは絶え間なく動き、サッカーにおける自由という言葉の意味を、改めて創り上げた。

 しかしそんな前半も、布石に過ぎなかったのかもしれない。後半に入り、バイエルンは前半ともまた違った質のサッカーを展開する。

 ボアテングに代えてラフィーニャが投入される。右SBにラフィーニャが入り、ラームはCBの前方へ、マルティネスがCBのポジションに入った。しかしマルティネスはCBという枠には収まらない。

 ポジションを上げ、前半同様チアゴ、クロースとともにトライアングルを形成する。かと思えば、ラームが中央でチアゴ、クロースとともにトライアングルを形成した。そうかと思うと、ラームは右サイドの深くを抉った。

 前半を通して異次元の布石を打たれたアーセナルに、また別次元のサッカーに対応するチカラは、もはや残されていなかった。60分を過ぎる頃には、完全に自陣へと釘付けにされてしまう。

 ゲッツェやミュラーが前線に進入し、ディフェンスラインを揺さぶり続ける。相手を嘲笑うかのように、クロースは左右両方へと美しく弧を描くボールを供給し続けた。54分にクロースが、88分にミュラーが、ゴールを突き刺す。ダンテのワン・バックとでも呼ぶべき布陣で、試合終了の笛が鳴った。

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