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日本代表 10年前

イメージトレーニングが活きたW杯最終予選。ザックジャパンを救った岡崎慎司の点取屋としての才覚

text by 元川悦子 photo by Getty Images , Ryota Harada

劣勢の中で見せつけた決定力

 このオマーン戦では内田篤人と香川真司が負傷欠場したため、右サイドバックに駒野友一、2列目右に清武弘嗣が先発。岡崎は左に回った。オマーンを率いるポール・ルグエン監督は2010年南アW杯でカメルーンを指揮して日本に敗れ、同年6月の最終予選のホームゲームでも0-3で大敗を喫しているだけに、リベンジの意識は強かったに違いない。

 その思惑通り、オマーンはロングボールを多用し、相手のミスを突く作戦に打って出た。それを日本は冷静に受け止め、確実なビルドアップで応戦する。とりわけ岡崎と長友佑都の左サイドは相手の背後のスペースにたびたび飛び込み、脅威を与えた。

 前半20分の先制点も2人と今野泰幸がお膳立てしてみせる。最終的に長友がえぐって上げたクロスにファーサイドから走りこんだ清武が飛び込む。彼の待望のA代表初ゴールが生まれ、日本は波に乗った。

 1-0で折り返した後半。日本は暑さによる疲労で徐々に足が止まり始める。ザック監督は最終予選初出場の酒井高徳を投入。彼を左サイドバックに入れ、長友を一列前の左MFに上げたのだ。

 これにより本田が1トップに上がり、清武が2列目の中央、岡崎が右に回った。これでチーム全体が活性化されたかと思いきや、まさかのミスが出て残る15分のところで同点に追いつかれる。

 ギリギリに追いつめられた日本。こういうときに必ずと言っていいほど結果を出すのが岡崎だ。残り1分という状況で、酒井高徳が絶妙のクロスを入れ、前に上がっていた遠藤保仁がワンタッチし、ファーから飛び込んだ岡崎が詰めたのだ。修羅場で絶対的な強さを発揮する生粋の点取屋の底力を誰もがまざまざと見せつけられた。

「6月のオマーン戦からゴールがなかったし、代表で決めきれなかったことが続いたんで、こういう我慢の試合で最後に決められたことは自分の中でも本当の自信になると思います。高徳がいい仕掛けをして、ヤットさんが触るなと思ったので、あのへんにこぼれるなと。あとは感覚でした。自分たちのサッカーで勝ちをつかみたいって思いがあの得点につながったと思いますね」

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