フットボールチャンネル

今季もCLベスト8、強さ維持しているが――。なぜドルトムントは今なお香川真司の復帰を望むのか?

text by 本田千尋 photo by Ryota Harada

物足りないムヒタリヤン

 監督解任によって少しメンタルがフレッシュになったのか、ゼニトは右サイドのフッキ、左サイドのダニーを中心とした速攻でドルトムントを苦しめた。ダブルボランチのファイズリン、ヴィツェルがボールを素早く両MFに供給する。フッキとダニーは、ドルトムントのSBとSH、ボランチの間のスペースを有効に活用した。

 ドルトムントは速攻を前提とした特有のプレッシングで反撃する。そして前線ではCFのレヴァンドフスキを中心として、左SHグロスクロイツ、トップ下ムヒタリヤン、右SHオーバメヤンがゴールへと向かう。17分、グロスクロイツがオーバメヤンにパス、オーバメヤンは頭でレヴァンドフスキへと送る。エースはシュートを放つが、右へと逸れた。

20140321_muh
今季からドルトムントに加入したムヒタリアン【写真:原田亮太】

 なぜ香川の復帰を望む声は根強いのだろうか。もちろんドルトムントがブンデスリーガを2シーズン連続で制覇する原動力だったということもあるだろう。しかしそれは裏を返せば、香川以後にドルトムントのトップ下として十分な活躍する選手が現れていない、ということでもあるはずだ。

 クロップは自身の戦術を遂行するために、まずトランジションの能力に長けている選手をチョイスする。局面を瞬時に判断し、攻守の切り替えをスムーズに行うことが出来るか。特有のプレッシング・スタイルを維持するためには、単なる運動量や速さだけでなく、もう少し踏み込んだ能力が必要とされるのである。

 その観点で見つめ直してみると、ドルトムントのトップ下としてムヒタリヤンは少し物足りなく映るのも事実だ。ウクライナの雄シャフタールのトップ下としてCLで力を示し、ドルトムントへの移籍を勝ち得たように、もちろん運動量やパスの精度といった能力は高い。

 しかしトランジションの能力でいささか見劣りする。先制点を奪われたシーンでは、ケールが対応するのを見守るのみだった。確かに距離はあったが、フッキにボールが入るや、もう少し詰め寄ってもよかったのではないか。

1 2 3

KANZENからのお知らせ

scroll top