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W杯観戦者が注意すべき犯罪以外のこと。ブラジルのディープゾーンから探る、サッカー王国の見方・歩き方

text by 海江田哲朗 photo by Getty Images , Kenzaburo Matsuoka

ロマーリオのような選手は現れない

「北部のほうがおおらかで、妬みやそねみの気質が少ない気がするね。程度の差はあれど、みんな貧乏を知っているから。気のいい奴が多いよ。南部の大都市では経済格差が大きく、そのぶん人間の暗い部分を見てしまうことが多いのかもしれない」

 ブラジルの国土は日本の22.5倍と広大だ。北端は赤道直下で、南端は雪の降る地域がある。気候の差は、ピッチ上で展開されるサッカーにも違いとなって表れる。

「気温が高く、かつ湿気の多い北部のサッカーはボールコントロールが中心になる。テクニックに走るチームが多いという印象だね。

 一方、南部はハードワークすることを教えられる。インテルナシオナル、グレミオ(ともにリオ・グランデ・ド・スール州のポルト・アレグレを拠点とする)など、ヨーロッパに近いスタイルを志向するチームが多い」

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もうロマーリオのような選手は現れない?【写真:Getty Images】

 近年、ブラジルのクラブではどのような変化が起こっているのか。

「資金に余裕のある南部の大きいクラブでは、選手の育成においてピッチ外の活動に力を入れるようになってきた。特に教育に対する考え方の変化は目覚ましいものがある。寮には勉強部屋があり、わざわざ教師を招いて授業を受けさせるクラブも。

 その反面、突拍子もない選手の出現は減った。ロマーリオ(94年のW杯アメリカ大会でブラジルを優勝に導いた稀代のストライカー)のような選手は現れないのではないかと言われているね」

 世界のサッカーが日進月歩の進化を見せ、ブラジルもまたその歩みを止めない。

「近頃、ブラジルのサッカーそのものが急速に変わってきている。昨年のコンフェデ杯を見れば明らかでしょ? セレソンのフォアチェックは日本より断然激しかった。巧さだけではなく、速さと強さもある。それがいまのブラジルだよ」

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