フットボールチャンネル

W杯観戦者が注意すべき犯罪以外のこと。ブラジルのディープゾーンから探る、サッカー王国の見方・歩き方

中南米最大の国土(面積は日本の約22.5倍)。広大なブラジルには観光スポットが多数あり、国内サッカー事情も地域によって特色はまばら。代理人である稲川朝弘氏、ASエルフェン狭山FCコーチである亘崇詞氏、南米事情に詳しいふたりにサッカーと旅の案内をしてもらった。

text by 海江田哲朗 photo by Getty Images , Kenzaburo Matsuoka

売れ残る北部の選手

20140323_redomi
レアンドロ・ドミンゲスもバイーア州の出身【写真:松岡健三郎】

 サッカー大国ブラジルにはどのような国内事情があり、またサッカーがどう変化しているのか。南米のサッカーに精通する人物に話を訊いた。

 FIFA公認エージェントの稲川朝弘氏は、柏レイソルのレアンドロ・ドミンゲス、ジョルジ・ワグネル、川崎フロンターレのレナト、ジェシなど、多数のブラジル人選手を来日させ、成功に導いた実績がある。

「最初のきっかけはウェズレイ(J1通算217試合124得点のストライカー。名古屋でプレーした03年は得点王に輝いた)の大当たり。彼は北東部のバイーア州の選手だね。サンパウロやリオ・デ・ジャネイロを中心に産業が発展している南部と比べて、北部は経済的に豊かではない。選手の価格も同様に、北のほうが安いんです」

 コストパフォーマンスに優れる選手を求める都合、稲川氏は北部の選手獲得に注力するようになったという。特にバイーア州のサルヴァドールに本拠地を置くECヴィトーリアをはじめ、北部のタレントが集結するクラブとの結びつきを強めた。

「大別すると、北部はアフリカにルーツを持つ黒人社会。南部はヨーロッパにルーツを持つ白人社会。そのため南部の選手はヨーロッパへ移籍する際のハードルが低い。一方、北部の選手はそれが容易ではないから売れ残ってしまう」

 16世紀から19世紀にかけ、奴隷貿易によって多くの黒人がアフリカからサルヴァドールの港に連行された。北部における黒人文化の広がりは、そういった歴史が根底に流れている。

 北部と南部では、選手の性格的な違いは見られるのだろうか。

1 2 3 4 5 6

KANZENからのお知らせ

scroll top