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Jリーグ 10年前

香川・柿谷らの才能はなぜ磨かれたのか? 恩師クルピが語る育成論と日本サッカーの課題

text by 沢田啓明 photo by Kenzaburo Matsuoka

ブラジルと何が違うのか?

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クルピ「曜一朗の素質はネイマールに引けをとらない」【写真:松岡健三郎】

――日本でも、「香川、本田、柿谷のようになりたい」という子どもが大勢います。

「それは、非常に大切なことだ。しかし、日本は豊かな国だから、プロのフットボーラーにならなくても別の仕事をして食べていける。そのことが、『何が何でも世界トップクラスのプロになる』という気持ちを妨げている部分がある。

しかし、貧乏だから必ず一流選手になれるわけではないし、経済的に恵まれているからいい選手になれないわけでもない。重要なのは、大きな『夢』を持てるかどうか。そして、その『夢』を実現するための努力を継続できるかどうか。それができたのが、香川や本田というわけだ」

――柿谷も、その道を歩んでいるようです。

「いつも言っていることだが、曜一朗の素質はネイマールに引けをとらない。しかし、若い頃は『将来、自分はこんな選手になるんだ』という『夢』を持っておらず、練習に真剣に向き合わなかった。何度も呼んで話をしたが、効果がなかった。

 それで、J2のクラブ(徳島ヴォルティス)へ出したんだ。そこで、彼は初めて『夢』を抱き、生まれ変わってセレッソへ戻ってきた。私は、彼のことを息子同然に思っている。いずれ彼がメッシやネイマールを追い抜いて世界一の選手になっても、私は驚かない」

――一般に、日本選手とブラジル選手では勝負強さの点で大きな違いがあるように感じます。

「理想は、練習でも試合でも100%の力を発揮することだ。しかし、日本では練習で100の力を発揮しても、肝心の試合では80だったり50だったりする。これでは“練習のための選手”であって、試合では頼りにならない。

 一方、ブラジルでは練習で50や80の出来であっても、試合では100の力を出せる選手が少なくない。こんな選手が、プロの世界で成功する。この差は、集中力の違いや実戦経験の多寡によって生じることが多い。これも、日本の選手が克服すべき課題だ」

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