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“対戦相手の印象は?”メディアの無意味な質問に本音を語らなくなった選手たち。理解できる本田の取材拒否

text by ショーン・キャロル photo by Getty Images

吉田が証明した試合前の“予言”の無意味さ

 特にこの最後の質問は、実際にはほとんど無意味なものだ。(とは言え、私もサムライブルーの何人かの選手にこの質問をしたジャーナリストと同じくらい有罪だが)

 この質問は、答えなくてはならない選手にとって正しい方法のないものだ。ハードルを低く設定すれば信念の欠如を批判され、高い目標を掲げれば冷やかされる。

 そして、岡田武史監督が2010年の目標を掲げた際に、多くの人々があざ笑うかのように否定したが、現在でもこの状況は存在し続けている。岡田監督は準決勝進出の目標が決して高望みではなかったことを証明したにも関わらずだ。

 パラグアイ戦はPK戦での敗戦であって、限りなくベスト8に近づいた。もちろん、ベスト4に進むためにはスペインの壁を超える必要はあったが、パラグアイは残り7分まで0-0で試合を進めていた(ダビド・ビジャが得点を決めた)。W杯の結果はごく僅かな要素で大きく変わるものだ。

 しかし、本田は大胆な発言をすることを恐れるような選手ではない。メディアとのやりとりにおいて彼はレアな存在であり、世界チャンピオンとしてスペインに取って代わる事が出来ると主張した。

 彼は、『ブラジルで成功を収められる自信があるか?』と質問された際に『はい』と答えている。

「僕たちは世界を驚かせたいと思っている。自分たちのスタイルに自信を持っており、優勝することを視野に捉えている」

 そして、数人の選手が彼のリードに続いた。(とは言え、本当にそう信じているというよりは、義務感から発言している印象だった)

 吉田麻也が代々木体育館での壮行会で発言した際に犯した手違いは、大会前の予言として読まれるべきではないものと証明した。

 このセンターバックは7000人以上のファンの前で「僕の夢もW杯で優勝…勝つ事です」と発言し、司会者によって「W杯で優勝する事です」と言い直させられた。これは、選手の発言が必ずしも彼らの本心を語っているものではないことの証だ。

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