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Jリーグ 10年前

2試合続けて逆転勝利の神戸、決勝ゴールを決めたのは森岡。神戸の背番号10がアギーレジャパンで輝くために必要なこと

text by 青木務 photo by Getty Images

シンプリシオを手本にもっと走れる司令塔に

 4-4-2の左MFの位置でスタートした森岡だが、試合の流れの中で自由にポジションを移動。5分にはMFシンプリシオとの細かいパス交換からチャンスを作りかけた。

 その後も、頻繁に中央に顔を出してはパスを呼び込む。スルスルと進むドリブルから、相手に隙が生まれるタイミングを見計らう。相手の動きもしっかり念頭に入れて絶妙なパスを出している。

 ただ、MF南野拓実の得点でセレッソに先制を許すと、相手の守備バランスは更に良くなり、神戸の攻撃は停滞。一人ひとりのボールを持つ時間が長く、相手の陣形を揺さぶることができない。

 それでも最終的には2-1で神戸が勝利している。逆転ゴールを決めたのは森岡だった。

 日本代表選出後、最初の試合で得点を挙げるあたり、“持っている”とも表現できる。しかし90分通してのプレーを見ると、もっとできたはず、という印象を受ける。

 多彩な技術や相手の意表を突くスルーパスなど、森岡自身の長所はすでに代表レベルだろう。だが、それだけで日本代表に定着できるだろうか。

 アギーレ監督は、走らない選手は呼ばないと話している。彩りのあるテクニックで魅了するだけでなく、泥臭く走り続け、戦うことが求められる。

 この日の神戸で目に付いたのはシンプリシオ。豊富な運動量でピッチを走り回り、攻撃ではパスを散らし、自らボールも運ぶ。守備では球際の強さがあり、危ない場所に顔を出した。そして、1点ビハインドの中で同点ゴールを奪ったのは、最前線まで駆け上がったシンプリシオだった。

 タイプが違うことはわかっているが、森岡はシンプリシオを目指してもいいのではないか。森岡も溢れる技術に溺れることなく献身的なプレーを見せているが、誰よりも走り、結果も残す元ブラジル代表から学ぶ点は多いはずだ。

 神戸では攻撃の要として、崩しの局面では森岡にボールが集まる。日本代表でもそういう存在になるには、今以上の献身性が求められる。

 ボールを持たない時間も試合から消えることなく、フリーランなどで味方のためにスペースを作る。そしてボールを持った時はその創造性をフルに発揮する。

 才能は誰もが認めており、代表入りも納得だ。だが更にその先、日本代表を背負って立つなら、もっとアグレッシブな姿勢を出すべきではないか。

【了】

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