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2015年の君たちは――。東京ヴェルディユース、花の92年組を追って:第12回 一意専心と放浪と

「サッカーをしながら、おれらの楽しさをもってやっていけばきっと大丈夫」

 横内は大学の授業や就活のセミナーで後ろのほうに座っているタイプだ。僕もそっち側の人間だったからよくわかる。そんなふうに世の中を斜めに見ている自分がもっとダサいということも、じつはとっくにわかっている。

「めっちゃわかります! どうせやるなら、がむしゃらにやったほうがいいに決まっている。失敗したときに恥ずかしい思いをしたくない保険。そんな姿勢ではいけないとわかってはいるんだけど、これがなかなかあらたまらない」

 性分というやつは厄介で、大抵は生涯ついて回るものだ。僕はそこを大昔に通り過ぎてしまったから手遅れだが、君にはまだ可能性がある。

 横内にとっての3年間は、放浪の季節だったのだろう。そうして過ごせるのも大学ならではのぜいたくな時間の使い方だ。一意専心取り組まなければわからないことがあれば、放浪しなければわからないこともある。僕は両方の若者にエールを送る。

 将来について訊ねたところ、明瞭に返ってきた答えはなかった。ぽつりと言ったのが、語学を習得したいということ。そこに殻を破る手がかりがあるような気がしているらしい。

「リョウとボンちゃん、ヴェルディに決まってマジでよかった。なんて言うのかな、ユウキやヨシアキがプロになったのとは、また違った感じなんですよ。ユースから昇格した5人は別格で、そのなかでもあのふたりは完全に抜けていた。リョウとかは僕と一緒といったら失礼なんですが、僕たち側の選手なんです。だから、なおさらうれしかった。ほかのメンバーもどうなるのか気にしています」

 12月30日には、毎年恒例のファミリーサッカー大会がある。ランドで育った選手たちが一堂に会する場で、当然、山浦や横内も参加する。年に一度の再会の場について、こう語ったのは小林祐希だ。

「誰それが戦力外になったとか、試合に出られていないとか、そんなのはなんとも思わない。同情なんて、これっぽっちもしない。ヨシアキはオランダから帰ってきて、少し下がっているように見えるかもしれないけど、あいつはちゃんと上がっていく。それがわかっているから、多少苦労していたところで気にも留めません。

 年末にランドで会ったとき、めんどくさいことを話したりしませんよ。言葉なんか必要ない。サッカーをしながら、おれらの楽しさをもってやっていけばきっと大丈夫だよ、一緒に頑張ろうぜとわかり合える」

(文中敬称略)

【了】

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