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「武藤嘉紀」として居場所を得るために。言葉の壁もプレーでも、積極姿勢で第一歩を踏み出す

text by 本田千尋 photo by Getty Images

ドイツ語の習得にも意欲。地元メディアも好印象

 ドイツ語で「ヨッチと呼んでください」と挨拶をした翌日には、チームメイトが「ヨッチ!」と呼ぶ声が練習場に響いた。言葉の壁に戸惑いながらも、武藤はミニゲームでゴールを奪っていく。「チームメイトも優しくて声を掛けてくれて、とてもやりやすい」と言うマインツの練習は、「日本と似ているな」という印象を武藤に残した。

 それはメニューがただ日本で経験してきたものと似ていた、ということに他ならない。それでも武藤がトレーニングをこなしていく様は、自然で淀みがなかった。渡独後1週間が経った頃には、堂々と練習場に足を踏み入れていった。

 ドイツに来て初めてのプレシーズンで、武藤はチームメイトと信頼関係を築き上げている真っ最中だ。互いを信頼し合うことで初めて、ピッチ上のプレーは成り立つ。だからこそ武藤は、物怖じせず声を出すこと、そして言葉の重要性を意識している。

 21日付の『アルゲマイネ・ツァイトゥング』電子版は、「新加入のヨシノリ・ムトウは既に最も重要ないくつかの単語をドイツ語で理解している-“後ろの人、ライン、いいね”」という見出しでマインツのエビアン合宿を報じている。

 同電子版は「片言のドイツ語」としながらも、「新加入の日本人にとってこれらの言葉は目下のところ全てを意味する。それはトレーニングに慣れることを助ける」と記している。地元紙は、武藤の積極的に言葉を覚えようとする姿勢にも好印象だ。

 16日に始まったエビアンでの合宿を23日に終えて、新シーズンで初めての公式戦となるドイツ・カップの1回戦まで、およそ3週間となった。武藤は着実にチームへと溶け込んで行っているが、まだ競争状態の中にある。合宿中に行われた19日のサンテティエンヌ戦では、後半から右SHで、22日のモナコ戦ではCFとして先発出場した。

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