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Jリーグ 9年前

浅野拓磨、謙虚と野心が同居するストライカー。先輩の背中を追い成長続ける広島の若き才能

text by 竹島史雄 photo by Getty Images

まだまだと語る浅野の飽くなき向上心

 もう一人、深いコミュニケーションで後輩を強くけん引しながら、若手が醸し出すピッチの厳しさも実感するのは塩谷司。寮生を中心に誘う食事会では「呼ばない選手がもしいれば不公平になる」からと若手全員にごちそうをふるまう豪気の男である。「頑張っているのは拓磨だけじゃない。みんなそう」と2ゴールを奪い、記者に囲まれる後輩に目を細めながら落ち着いた語りで始めた。

「2部練を続けながら、次の相手を想定したチームの役割として紅白戦を戦ってくれている。サブ組との紅白戦のほうがキツいときもある」

 試合に出てない選手が高いモチベーションで挑む日常ゆえの「チームがまとまっている。練習が厳しい」と2013年シーズンとの違いを塩谷は語りつつ、「(今日の2ゴールは)頼もしいといえば頼もしいですけどね」と筆者のやや誘導的な質問を肯定してくれた。

 浅野は常日頃から決勝点、すなわちチームを救うゴールにひと際意味を置く。途中出場でのゴールは決勝点であり、この日のように劣勢を跳ね返す貴重な追加点でありと、一層の歓喜を導く一振りが多い。セカンドステージ、年間と優勝争いをするチームを十二分に助けている。

 しかし、毎試合後まだまだだと言葉を重ねる浅野。常に課題と高みを要求するのは、J1歴代最多得点に王手をかけるエースに全てが学ぶところとその背中を追いつづけ、失敗に落ち込みがちな7人兄弟妹の3男にチャレンジを説き続ける、優勝を知る選手たちと毎試合に向けた準備を過ごすからでもあろう。身に染みるつつある探究の心が、浅野のモチベーションの高い日々を支えている。

【了】

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