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Jリーグ 8年前

歴史に名を刻んだ佐藤寿人。得点数だけでないその魅力、自らが受け継ぎ未来へとつなぐ思い

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「フィニッシャー以外の役割を負うこともいまは求められている」

 相手の最終ラインの裏へギリギリのタイミングで抜け出し、手数をかけずにゴールを陥れる。いつしかワンタッチゴーラーと呼ばれた佐藤にとっては会心のタイミングでも、副審が旗をあげることが少なくない。

 それでも、疑問と不満を募らせるのは一瞬だけ。相手チームだけでなく審判団も、一緒にサッカーの試合を作り上げていく仲間としてリスペクトの思いを注ぐ。

「審判も人間なので、変に言われてもいい気持ちはしない。こちらが言ったところで、何も返ってこない。だったら、お互いに気持ちよくプレーしたほうがいい」

 微妙な判定を下した副審に向けられる佐藤の爽やかな笑顔には、リスペクトとともに「次はちゃんと見てください」というメッセージも込められている。

 33歳で迎えた今シーズンは全34試合に先発を果たした一方で、フル出場は1試合だけに終わった。後半15分前後に、判で押したように21歳のFW浅野拓磨との交代でベンチへ下がってきた。

 ベルマーレ戦も後半16分でお役御免になる。相手が疲れてくる時間帯には、爆発的な縦へのスピードをもつ浅野のほうが脅威を与える。交代の意図を理解する一方で、以前とは異なる自分にも気づいている。

「ちょっと冷静に考えると、去年までと大きく変わるのは、練習で紅白戦やゲーム形式をやっても自分がシュートを打つ回数がすごく少ないんですね。それは間違いなくチームとしてのサッカーの形が、去年までとは変わってきているから。

 そのなかでチームとして得点を奪えているので、たとえば自分がちょっと動いてボールを受けてスペースを生み出すとか、自分がフィニッシャー以外の役割を負うこともいまは求められているのかなと」

 ベルマーレ戦で放ったシュート数は1本のみ。ゼロに終わった試合も少なくない。それでいて、サンフレッチェの総得点はリーグ最多の73を数えている。

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