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Jリーグ 8年前

苦難乗り越えた守護神・中村航輔。太陽王が生んだ“最高傑作”の覚醒なくして福岡の昇格なし

text by 舩木渉 photo by Getty Images

GKに必要な能力を全て備えた逸材

苦難乗り越えた守護神・中村航輔。太陽王が生んだ“最高傑作”の覚醒なくして福岡の昇格なし
中村の魅力は何と言っても「決断の速さ」【写真:Getty Images】

 中村の魅力は何と言っても「決断の速さ」だ。その瞬間に求められる最適解をいち早く見つけ、それを瞬時にプレーへ落とし込める。相手と1対1になった場面では最後まで倒れず、シュートコースを見極めて長い手足を伸ばす。厳しいコースのシュートにも全力で食らいつき、こぼれ球を詰められない場所へ弾き出す。クロスへの飛び出しも勇敢で、積極的に前へ出てピンチの芽を摘む。

 また、ボールを持てばすぐさまフリーの選手を見つけ、高精度のフィードで攻撃の起点になり、GKが最も苦手とする足もとへのシュートも苦にしない。柏のアカデミーで鍛え上げられたフィールドプレーヤーばりのテクニックも備えている。

 井原監督がプレーオフ決勝の試合後、今季のターニングポイントに挙げた8月15日の第29節ジュビロ磐田戦も、中村の活躍なしに勝利はなかった。太田吉彰の強烈なシュートを足に当て、アダイウトンやジェイとの1対1を制し、無失点で終えたことがチームに大きな自信をもたらした。

 今季の総失点数37は、大宮アルディージャと並んでリーグ4番目タイの少なさだった。総得点はリーグ3番目の多さだったが、二桁得点を達成した選手がいないチームにおいて後半戦の堅守を実現した中村の活躍がなければ昇格はなかったといっても過言ではないだろう。

 期限付き移籍中の身であるため来季も福岡に残るかはわからない。だが、柏に戻っても向こう10年チームの守備を支える役割と、輝かしい未来が約束されているに違いない。U-22日本代表としてリオデジャネイロ五輪出場を目指す中村が“福岡の守護神”の次に見据えるゴールは“日本の守護神”だ。

【了】

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