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アジア 8年前

豪州版レスター?“バルサ流”で最下位から頂点へ。Aリーグを席巻したアデレード率いたのはあの名手

text by 植松久隆 photo by Getty Images

鍵となった守備の整備。ペップの影響も色濃く

 その今季の優勝は、ポゼッションして無駄な失点を喫しない安定した戦いぶりによってもたらされた。そのスタイルは、今季を通じて28失点というリーグ1の堅守と数字に、何よりも雄弁に表れている。

 ゴンバウ時代にタイトルに届かなかったのは、攻撃的サッカーという華やかさの陰で大事なところでの不用意な失点が多くて勝ちきれなかったという部分が否定できないが、アモールはそこにもしっかり目配りをしてきた。

 奇しくも、今回のGFの相手となったWSWから移籍してきたヤコポ・ラロッカ(32)を本職のボランチからCBへコンバートしたのなどはその典型。前半戦をケガで棒に振ったラロッカを復帰後、本人も驚いたCBで起用。そして、その起用がハマって、元々引き締まっていたDF陣がさらに引き締まり、結果的にシーズン失点数もリーグ最低と大きな進歩を見せたのだった。

 監督初年度で最高の結果を引き出したアモール。トップの指導者としての経験は浅かったが、さすがに長くバルセロナの育成を見てきただけにコーチとしての資質の高さは、しっかりと結果で証明して見せた。

 今後、アデレードがリーグの強豪として安定した立場を確立していけるかは、ひとえにアモールをどれだけ引き留められるかによる。現実的には、来季も指揮を執りAリーグ連覇と豪州王者として臨むACLでの成功を目論むのであろうが、彼の視線の先にはフットボールの本場での成功が視野に入れていることも間違いない。

 あのジョゼップ・グアルディオラがピッチの内外で強く影響を受けたというアモールが、豪州での実績を携えて、さらなるコーチングキャリアの高みに挑戦するべく欧州に戻る日は遠からずやってくる。

 その時が来るまで、アデレード、そしてサウス・オーストラリア州のサッカー界は、バルセロナ育成の一つの典型とされるレジェンドが、バルセロナ流のノウハウを還元していく機会をひと時たりとも無駄にしてはなるまい。

 さて最後に、今季が終わったところでのAリーグの移籍の動きをざっと振り返っておく。

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