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引退後、サッカー選手が路頭に迷わないために。“経験者”玉乃淳が説く、決断できることの重要性【インタビュー】

text by 本田千尋 photo by Jun Tamano

多くの怪しい誘い。全て消すためカナダへ

玉乃淳
玉乃氏は「ゼロにリセットしたいと思ってカナダに行った」と語る【写真提供:玉乃淳】

――具体的には、どのような?

「怪しい団体から宗教に入ってみないか、とか、詐欺師のような人も寄ってきて、こういうこれに投資しないか、とか。元サッカー選手だからお金は持っているだろうって思われていたみたいです。受験を勧められたみたいに、色々なアドバイスも頂けたんですけど……。

 でも、その選別も何が良くて何が良くないのか分からない。どうやって選別をしていいのかも分からない。そんな状況が嫌になって、そんな世界をリセットしたい、ゼロにリセットしたいと思ってカナダに行ったんです」

――あくまで日本から出ることが目的で、カナダが目的ではなかった。

「そうですね。メジャーリーグサッカーも、当時は盛んではありませんでしたし。カナダを選んだのは、全て消したかった。自分の過去を」

――サッカー選手を辞めて、キャリアが終わったとして、相談できる人や、相談できるような組織もなかった。

「どうやって、何をしたら、どうなるのか、この先の道が全く見えなかったですね。良いことを言って下さっている人もいたとは思いますけど、『また騙されているんじゃないか』とか『そんなの僕には無理だよ、出来ないよ』とか、悲観的な状況に陥っていたことは事実としてありました。引退して、さらなる次の道へ、というポジティブな感じではなかったです。正直」

――サッカー選手というアイデンティがなくなって、自信、自分を支えるものが消えてしまったわけですね。

「ないですないです、ないです。現役の時は『引退したら死ねばいい』って思っていたんです。自分にはサッカーしかない、っていうのは自覚していましたし。でも、それが本当になくなった時に『マジやべえな。本当に俺、何もないわ』というところからのスタートでした。

 よく現役の時に『辞めたらどうするの?』と言ってくる人もいましたけど、『サッカー辞めたら死ぬよ』と突っぱねていました。10代の頃は、目の前の世界が延々と続くと思っていましたから」

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