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Jリーグ 8年前

G大阪、中盤の配置転換で脱「宇佐美ロス」へ。トップ下・遠藤、ボランチ・倉田が放つ輝き

text by 藤江直人 photo by Getty Images

2月の開幕戦での零封を倍以上で返す

 右コーナーキックから狙いを定めたのはファーサイド。DF金正也とMF阿部浩之にそれぞれDF西大伍とMF柴崎岳がマークにつき、さらには日本代表DF昌子源が余っていたエリアに漂っていた弛緩した雰囲気を、百戦錬磨の36歳は見逃さなかった。

 緩やかな放物線を描いたボールは金と阿部を、さらにはジャンプした昌子の頭上をも超えていく。

「オレは何もしていない。ただ立っていただけなんですけど」

 今野が苦笑いしたのも無理はない。ファーサイドの密集地帯の上空を通過してきたボールは、さらに外側に位置取っていた背番号15の頭と完璧にシンクロ。アントラーズのゴールネットを揺らしたからだ。

 昌子とU-23日本代表の植田直通を中心に堅守を誇ってきた今シーズンのアントラーズにとって、これがセットプレーから喫した初めての失点だった。しかも、牙城崩壊は一度だけにとどまらない。

 後半28分に今度は左サイドで獲得したコーナーキック。遠藤の照準は同じように味方にマンツーマンでマークがつき、昌子が余っていたニアサイドに定められる。

 一転して低く、速いボールが競り合う阿部と柴崎の頭上を超えて鋭く落ちる。マーカーのFW鈴木優磨の死角を突き、その前方へ走り込んできた金の頭をへたボールは、ゴール右隅へと軌道を変えた。

 アントラーズが1試合で3失点を献上するのも今シーズンで初めて。屈辱を幾重にも上塗りされた逆転負けに、ディフェンスリーダーの昌子は「特に3点目はオレの責任」と唇をかんだ。

 新本拠地の市立吹田サッカースタジアムにアントラーズを迎えた2月28日の開幕戦で喫した、0-1の零封負けの悔しさを倍以上にして返した快勝劇。長谷川監督が勝因をあげる。

「ヤット(遠藤)の守備の負担がかなり減ったので、いい部分を出しやすくなったというのはありますね」

 ボランチの遠藤をトップ下に、2列目を主戦場としてきた倉田秋をボランチにすえる。5月21日のサンフレッチェ広島戦で初めて試した新布陣が、セカンドステージの成績を左右しかねないアントラーズとの開幕戦でほぼ完璧に機能した。

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