ドイツはなぜ強いのか。育成年代では日本が圧勝も、その後に生まれた大きな違い

2016年07月09日(Sat)8時00分配信

text by 中野吉之伴 photo Getty Images
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ドイツの選手育成の成功を証明

メスト・エジル
エジルほど守備の戦術理解が高く、オフザボールの動きにも長けた選手は多くはいない【写真:Getty Images】

 そんな現在のドイツの強さを語るうえで欠かせない選手育成の成功について触れてみたい。例えば主力メンバーのメスット・エジル、フンメルス、ベネディクト・ヘーベデス、ジェローム・ボアテング、マヌエル・ノイアー、ケディラは2009年U21欧州選手権優勝メンバーでもあるが、彼らは一昔前のドイツからは生まれてこなかったタイプだ。

 きっかけとされるのは2000年欧州選手権グループリーグ敗退。この悪夢から立ち直るべく、ドイツは徹底的に自分たちを見つめなおした。美徳である1対1の強さと走力、最後まであきらめない闘争心をベースにチームとしてコレクティブに戦い、相手守備を打ち砕くためにクリエイティブな瞬間を生み出す。そして、こうしたサッカーを体現するためにはどんな選手が必要で、どんな育成が必要かをドイツサッカー協会中心に徹底的に研究し、それを現場に落とし込む努力を惜しまなかった。

 今大会でも素晴らしいプレーを見せているエジルは、こうした育成から生まれてきた代表格の選手と言えるだろう。ドイツの攻撃にアイデアを与える稀有な存在だ。「今大会のエジルは不調」という声も聞くが、私が見る限り3戦目以降のエジルは素晴らしかった。

 エジルはただ自分勝手にプレーするだけの選手ではない。やるべきプレーを欠かすことなく、攻守に貢献できる選手。“クリエイティブ”とされる選手は世界中に多くいる。だが、エジルほど守備の戦術理解が高く、オフザボールの動きにも長けた選手は多くはいない。よくいる「ボールをもらえば何かをするが、ボールをもらえないと何もできない選手」ではないのだ。

 だが、ドイツサッカー協会が取り組んできた『タレント育成プロジェクト』がなければ、彼のような選手は”軽いプレーをする”選手として失格の烙印を押されていたかもしれない。
 ドイツ全土に眠るタレントの卵を見逃さないようにと、ドイツサッカー協会は国内を網羅するシュッツットプンクト(トレセン)システムを構築した。そして。たとえばフィジカルコンタクトが強くなくても、技術レベルが高く、相手との駆け引きの中で光るものを見せる選手を評価するようになり、辛抱強く、長期的な視点でサポートするようになった。

 ドイツにとってアイデアを持った選手を見つけ出し、その選手をどのようにチームスポーツであるサッカーに生きる形で育成することができるかがカギだったのだ。

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