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代表 8年前

データは“お守り”。それだけでは勝てない【サッカーデータ革命最前線―04】

最先端のサッカーにおいてデータ分析はなくてはならないものだ。感覚や印象ではなく客観的事実の積み上げで見えてくるものは多々ある。それにおいて世界でも頭一つ抜け出ているのはドイツ代表だろう。結果を出し続けるために、データ分析はどこまで進んでいるのか。短期集中連載で最前線に迫る。(取材・文:本田千尋【デュッセルドルフ】)

シリーズ:サッカーデータ革命最前線 text by 本田千尋 photo by Prozone , Getty Images

一般者を対象とするワークショップも

プロゾーン
プロゾーンが行う“エデュケーション”【写真提供:プロゾーン】

 最後に、Prozone(プロゾーン)が力を入れていることを紹介したい。“エデュケーション”というシステムである。

 プロの分析集団として、プロゾーンは代表チームやクラブを顧客とするコンサルティング業を行っている。ドイツ代表の中にスタッフが自然と入り込んでいるように、彼らの活動は人目にはわかりづらい。デュッセルドルフの事務所はライン川沿いの集合住宅の中にある。ここにドイツ代表やバイエルンと提携する分析会社が存在すると、通りすがりの誰が気付くだろうか。

 しかしプロゾーンは、秘密結社のように閉じこもっているわけではない。大学機関と提携して、一般者を対象とするワークショップも行っているのだ。

 例えば、リバプールにあるジョンムーア大学では、プロゾーンとして以下3つのコースを提供している。

 【1】MATCH & PERFORMANCE ANALYSIS
 【2】ATHLETE MONITORING
 【3】ADVANCED ANALYTICS

【1】についてはコースが細分化されており、導入、レベル1、2、3、レベル1~3をまとめたコース、の5つがある。

 レベル1では、プロゾーンのソフトウェア「MATCHVIEWER(マッチビューアー)」を用いて、受講者にパフォーマンス分析を運用する技術とアイデアのイントロダクションを行う。プロフェッショナルな分析の世界の入門編である。

 “エデュケーション”と言っても、プロゾーンが受講者をプロの分析官に仕立て上げるために修練を課す、ということではない。そういった意味合いもあるにはあるが、ワークショップは、プロゾーンが分析の世界を通して培ってきた知を一般者に拓く場、と言えるだろう。

 ジョンムーア大学の各コースは、費用を支払えば、誰でも受講することができる。アマとプロを含む選手や指導者としての経験を問わない。参加者は、単に分析に興味がある人から現に欧州各地のプロクラブで働いている人まで、幅広い。1つのコースの修了の目安は2日だ。修了者には証明書が発行される。

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