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Jリーグ 8年前

齋藤学が不在のマリノス。ルヴァン杯準決勝で問われるマルティノスの真価

text by 舩木渉

齋藤とマルティノス、最高の関係

 おそらくヨーロッパ時代は逆サイドとの攻守のバランスや、守備時の役割について考えることはなかっただろう。マルティノスは齋藤がドリブルで仕掛ければ必ず逆サイドからペナルティエリア内まで走ってゴールを狙っており、展開しだいでは中盤まで下がってパスを引き出す動きもする。

 マルティノスがボールを持たない時に見せる特徴的な動きがある。味方が守備をしている際、ボールを奪い切る前に右サイドで縦に走っているのだ。カウンターで相手の裏を狙う動きなのだが、チームの戦術で決められたものなのか、自分の考えでやっているのか。

「もちろんそこは決められた動きではなく、考えながらやっている。相手が『あいつきていないんじゃないかな』と思ってボールを受けたら素早くプレスにいけるし、周りとのバランスや距離感を保つようにしている。また自分が動き出せば味方がボールを奪った瞬間フリーになれるので、相手と駆け引きしているだけだよ」

 ただのドリブラーではない。日本のサッカーに順応するためにどうすればうまくいくのか考え、ピッチ上で実践している。以前のように高い位置でボールを受けるにはどう動けばいいのか、守備から攻撃へスムーズに切り替えるには、自分がプレーするスペースをいかに作るか…Jリーグで結果を残すためにあらゆる試行錯誤を重ねてチームメイトの信頼を勝ち取った。

 もちろん本来の持ち味であるドリブルの鋭さは失われていない。逆サイドの齋藤という存在がいるからこそマルティノスも生き、その逆も然りだ。「もし片方しかなければ、相手にとってカバーは容易になるし、そこに集中できる。(齋藤)マナブは危険なドリブルを持った選手で、僕にとってもいい影響がある。DFにとっては守りにくいだろうね。なぜなら自分たちは縦だけでなく中にも入っていける、クロスも上げられる。すごくいいバランスを保てている」と手応えを感じている。

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