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日本代表 8年前

日本代表は本当に“守備的”だったのか。データが明らかにするオーストラリア戦の真実【データアナリストの眼力】

シリーズ:データアナリストの眼力 text by 中山佑輔 photo by Shinya Tanaka, Getty Images

高かった「ボールを繋ぐ意識」

オーストラリア戦では1トップに入り、パス受け数が日本の中で最多となった本田圭佑
オーストラリア戦では1トップに入り、パス受け数が日本の中で最多となった本田圭佑【写真:田中伸弥】

 たしかにイラク戦とオーストラリア戦では、パス受け上位につけている選手が大きく変わっている。表1にある通り、オーストラリア戦における日本代表のパスは、実に50%弱が本田、香川、原口、小林という前線の4選手に供給されていた。

 もっとも、この数字を見るだけでは、単純に深い位置で守り、低い位置でつなぐことを避け、前線へ長いボールを送る回数が多かったのではないかとも思えなくはない。だが、日本代表のパス成功率は、前線の選手へパスを送る割合が増えているにもかかわらず、72.4%を記録している。この点を踏まえ庄司は、日本代表の戦いが「縦に速い」だけではないと主張する。

「一般的にいわゆる“縦ポン”サッカー、奪ったボールを素早く前線に蹴り込むサッカーであれば、パス成功率は30%台程度に下がります。私が主にデータ分析をしているドイツ・ブンデスリーガであれば、レヴァークーゼンなどがそうですね。

 しかし、オーストラリア戦での日本のパス成功率は72.4%。前線にパスする割合を増やしながらも、そこに丁寧さがあります。ボールを繋ぐという意識はかなり高かったと言えるでしょう。

 確かにこれまでの試合よりも基本の守備位置は低めになっていましたが、攻撃効率で言えば、むしろオーストラリア戦の方が高かったとすら言えるかもしれません。そう考えると単純に守備的だったとは言えないと思います。この試合の日本代表と似たようなコンセプトでプレーしているのが、ディエゴ・シメオネ監督が率いるアトレティコ・マドリーです。

 強固な守備ブロックとチーム全体が連動するプレッシングにより相手のパスミスを誘発し、奪ったボールは丁寧にグリーズマンら前線の選手につける。EUROでは、そのグリーズマンを擁するフランス代表がドイツ代表との試合で同様の戦い方を見せていましたね」

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