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日本代表 8年前

日本代表は本当に“守備的”だったのか。データが明らかにするオーストラリア戦の真実【データアナリストの眼力】

シリーズ:データアナリストの眼力 text by 中山佑輔 photo by Shinya Tanaka, Getty Images

世界的に一般化してきたアトレティコの戦術

【表2】ブンデスリーガ第7節のパス成功数、ポゼッションとスコア。ボール支配率で劣るチームで敗れたのはインゴルシュタットのみだった。
【表2】ブンデスリーガ第7節のパス成功数、ポゼッションとスコア。ボール支配率で劣るチームで敗れたのはインゴルシュタットのみだった。

 ディエゴ・シメオネ監督率いるアトレティコ・マドリーがリーガエスパニョーラやUEFAチャンピオンズリーグで躍進するようになって以降、ボールを支配しているチームが試合を優位に進められない試合が増えてきた。

 シメオネは「私にとってポゼッションはライバルを快適にするもの」と語り、ボールを支配するよりもゲームを支配することを重視している。庄司は、このアトレティコの戦い方が世界的に一般化してきたと語る。

「アトレティコのサッカーは“負けないサッカー”と呼べそうですね。先日のブンデスリーガ第7節では、表2にある通り、ポゼッション率で劣っているチームは1つしか負けなかったんです。“勝つサッカー”に到っていないところもあるのかもしれませんが、ポゼッションされても“負けない”方法はわかってきた。

 以前のワールドカップ予選では、アジアの中で強豪とは言えないチームが日本代表と戦う場合、5バックなどでゴール前にベタ引きすることが多かったと思います。ですが今では、そうしたサッカーをするチームはアジアでも減っていますね。実際、9月に日本代表と対戦したUAEもタイも全体をコンパクトにした4バックの陣形を取り、それほどDFラインを低くしてきませんでした。

 オーストラリア戦の日本は、“負けないサッカー”は実践できていました。ですが “勝つ”という部分になると物足りないところがあったのは事実だと思います。本田、香川らにボールは入っていたものの、そこから崩すという点は今後の課題と言えるでしょうね」

 アトレティコがバルセロナやバイエルンに対して“負けない”だけでなく「勝てる」のは、どこに要因があるのだろうか。庄司は、高い位置からの組織的なプレッシングをポイントに挙げる。

「アトレティコの場合、規律のある組織的なプレッシングで相手を押し込むことができます。“プログレッシブ・プレッシング”(前進するプレッシング)とでも言えそうですね。比較的高い位置でボールをひっかけることで、前線へのパスも距離が短くなる。アトレティコはロングパスというよりミドルパスが多いんです。そこでチャンスが作れます。実際、オーストラリア戦での日本の先制点は、比較的高い位置でボールを奪えたシーンから生まれていますね。ちなみにこれを実践するのであれば、他の選手と連動ができない選手は使えません」

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