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日本代表 8年前

日本代表は本当に“守備的”だったのか。データが明らかにするオーストラリア戦の真実【データアナリストの眼力】

シリーズ:データアナリストの眼力 text by 中山佑輔 photo by Shinya Tanaka, Getty Images

ワールドカップ本大会で必要になる戦い方

アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督
アトレティコ・マドリーのディエゴ・シメオネ監督【写真:Getty Images】

 プレッシングで相手を押し返せずに押し込まれる時間が続くと、サイドハーフや前線の選手が攻撃に出るときの距離が長くなり、体力的に厳しくなってくるという問題もある。“負けない”から次の段階に行くには、プレッシングが一つのキーになるということだろうか。

「そう思います。攻撃面で物足りない部分があったからと言って、あの戦い方を『臆病だ』と断じて100%否定しまうことには違和感があります。ポゼッションで上回ることが目的ではないのですから、むしろ一つのステップだと捉えたほうがいい。

 日本の立ち位置を考えると、ワールドカップ本大会ではこうした戦い方が必要になるでしょう。ですから、“負けないサッカー”がある程度できたということをポジティブに捉えつつ、親善試合や予選を戦いながらこのスタイルを積み上げていくべきだと思います。もちろん、相手に応じて日本がポゼッションする側になるケースがあることも忘れてはいけません」

 日本が次にアジア最終予選で戦うのはサウジアラビアだ。親善試合のオマーン戦を挟んでの一戦となるが、どのような試合になるのだろうか。庄司はサウジアラビアが “負けないサッカー”を実践してくるだろうと読む。

「ここ最近の両国の立ち位置を踏まえると、おそらくサウジは“負けないサッカー”を実践して日本の隙を狙ってくるでしょう。日本のボールポゼッション率は高くなると予想されます。そのときに日本代表がどのようなサッカーを見せるか。イラク戦のように、センターバックのパス受けが多くなるのであれば、あまり攻撃がうまくいっていないと言えると思います」

“負けない”サッカーの本家アトレティコは、ゲームを支配するのにボールを必要としていない。バルセロナやバイエルンを相手にしたときこそ、彼らはその強さを発揮しているような感もある。だが一方で、自分たちが格上になり、ボールを支配する展開になった試合でも勝利を重ねている。

 グリーズマンを中心とした攻撃もクオリティが高く、この“2枚刃”の戦術によって、彼らは“勝ち切るサッカー”が実践できているのだ。現状の日本代表が世界的な強豪ではない以上、対戦相手に応じた2つの戦い方を持っているというのは、決してネガティブなことではない。

(分析:庄司悟/文:中山佑輔)

(データ協力:wyscout)

【了】

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