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Jリーグ 7年前

川崎Fの敗因。故障者の連鎖、大久保の移籍報道。大一番で悲嘆にくれた“等々力劇場”

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「パワープレーをしてきてほしかった」(昌子源)

 アントラーズ戦でもボランチのエドゥアルド・ネット、左サイドバックの車屋紳太郎らが決して大雑把ではないロングボールを前線へ供給したが、その時点で相手の術中にはまっていた。アントラーズの最終ラインを束ねる昌子源は、「パワープレーをしてきてほしかった」と試合後に本音を明かしている。

「川崎さんの戦いやから何とも言う気はないけど。ただ、どちらかといえば、川崎さんらしく最後までつないで攻めてきていたら、僕たちもずれて、ずれてとなる。最後のほうは危ないシーンもあったけど、正直、僕たちもはっきり戦うことができた。とにかく僕と(ファン・)ソッコではね返す。適当でもいいからクリアする、という感じでね」

 実際、フロンターレがパスをつないで決定的なチャンスを作ったシーンもあった。1点を追う後半14分。小笠原との1対1を制した三好がそのままゴール前に迫り、利き足の左足からスルーパスを送る。センターバックのファン・ソッコの背後を取り、ペナルティーエリアの左側へ侵入していったのは中村だった。

 このとき、逆サイドからカバーリングに走ってきた昌子には閃くものがあった。中村は必ず切り返して、右足でシュートを放ってくる、と。もっとも、100パーセントの確率ではない。最も避けたいのは、そのまま左足でシュートを放たれること。昌子は瞬時に罠を張ろうと決意した。

「あそこで僕がカバーリングのスピードを落としていたら、そのまま憲剛さんに左足でシュートを打たれていた。そこでわざと大げさにスライディングしていったら、案の定、切り返してくれた。あの切り返しに1秒かかるだけで、ソッコは間に合うだろうし、ソガさん(曽ヶ端)も一歩前へ出られると思ったので」

 昌子にチャレンジを任せてカバーに回っていたファン・ソッコが、切り返しからシュート体勢に入った中村に猛然とプレッシャーをかける。曽ヶ端も前へ詰めて、両腕を大きく広げている。シュートコースがないととっさに悟ったのか。中村が放った一撃は、ゴール左側のサイドネットをかすめて外れた。

 直後にピッチで突っ伏し、中村は頭を抱えている。対照的に曽ヶ端とソッコが右手を軽くタッチさせ、カバーに回っていたDF西大伍も昌子へ右手の親指を立ててサインを送っている。試合後の昌子は、その光景に「僕たちディフェンス陣の、組織の勝利やった」と会心の笑顔を浮かべている。

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