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Jリーグ 7年前

CS仕様の鹿島、「普段通り」の浦和。交代カードで顕在化した勝負強さの差

鹿島アントラーズの7シーズンぶり8度目の年間王者獲得で幕を閉じた2016シーズンのJ1戦線。年間勝ち点3位から、Jリーグチャンピオンシップ準決勝では同2位の川崎フロンターレを撃破。決勝では同1位の浦和レッズに先勝されながらも、3日の決勝第2戦では2‐1の逆転勝利をもぎ取り、アウェイゴール数の差で通算18冠目を獲得する下克上が成就された舞台裏では、いったい何が起こっていたのか。対照的に映った交代のカードの切られ方に、両チームの明暗を分け隔てた「差」が存在している。(取材・文:藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

2点以上を奪っての勝利が求められた鹿島

チャンピオンシップを制し、2016年のJリーグ王者に輝いた鹿島アントラーズ
チャンピオンシップを制し、2016年のJリーグ王者に輝いた鹿島アントラーズ【写真:Getty Images】

 わずか3分の間に切られた、3枚もの交代のカード。内訳は鹿島アントラーズが1枚、浦和レッズが2枚だったが、リザーブの選手が投入されるたびに、試合の流れは皮肉にもアントラーズへと傾いていった。

 開始わずか7分にレッズのFW興梠慎三が鮮やかなボレーを決め、40分にはアントラーズのFW金崎夢生が執念のダイビングヘッドをねじ込む。レッズの先勝で迎えた3日のJリーグチャンピオンシップ決勝第2戦は、両エースの競演で同点のまま後半へ突入した。

 膠着しかけた展開を動かす手段のひとつに、選手交代があげられる。果たして、決勝第2戦で先に動いたのはアントラーズ。同点弾をアシストしたMF遠藤康に代えて、58分にFW鈴木優磨を投入した。

 90分間を終えて引き分けでも年間優勝が決まるレッズに対して、アントラーズは2点以上を奪っての勝利が必要だった。ゆえに先にカードを切った理由を、試合後の公式会見で石井正忠監督はこう明かす。

「我々が同点に追いついたことで逆にレッズさんのほうにプレッシャーがかかり、後半に入ってからは前半と違って勢いがなくなってしまった。あとはレッズさんの左サイドですね。少しバテてきているように見えたので、そこを徹底して突く形に変えました」

 鈴木は遠藤が務めていた中盤の右サイドに配置された。181センチ、70キロのサイズに高さと馬力を搭載させ、前への推進力にも長ける20歳。リーグ戦でチーム2位タイの8ゴールをあげるなど、成長著しいストライカーに託されたミッションは明白だ。

 レッズの左ワイド、宇賀神友弥にさらにプレッシャーをかける。同点とされた場面では、軽いと言わざるを得ないボディコンタクトから遠藤に体を入れ替えられ、突破を許したのも宇賀神だった。

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