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Jリーグ 7年前

昌子源、激動の1ヶ月で学びとった鹿島の伝統。「『いい試合をした』じゃあ意味がない」

text by 藤江直人 photo by Getty Images

「『いい試合をした』じゃあ意味がない」(昌子源)

昌子源
激動の1ヶ月間で鹿島アントラーズの伝統を学び取った昌子源【写真:Getty Images】

 日本中を熱狂させた一戦を終えて瞬間に抱いた思いこそが、実は昌子が抱いてきた疑問に対する答えなのかもしれない。相手がレアル・マドリーであろうが、戦うからには必ず勝つ。ミニゲームでボールを取られただけで顔を真っ赤にして激怒し、再戦を要求した神様ジーコの姿を通して黎明期に伝授された“負けず嫌いのDNA”が、21世紀のいまもなお伝統として脈打っている。

 だからこそ、レアル・マドリーに善戦したという結果に満足できない。最終的にはロナウドにハットトリックを達成されて、引き立て役に回った。最強軍団の本気を引き出した、と言われも「それが目標じゃないから」と昌子は一笑に付す。

「特に鹿島というクラブは、『いい試合をした』じゃあ意味がないんです。かなり大きな差があるとは思うけど地道に努力を積み重ねていって、今回のように『惜しかったけど負けちゃったね』という覚えられ方ではなく、いつかは『レアルに勝ったチーム』として、鹿島の名前を世界に広めたい」

 Jリーグアウォーズから一夜明けた21日、アントラーズはベスト8に勝ち残っている天皇杯へ向けて練習を再開させた。目の前にある戦いをすべて制し、タイトルを取り続けていくことで世界との差を埋められていくと考えれば、準優勝の余韻に浸っている時間はいっさいない。

 メンタル的にも難しい試合となりかねないが、昌子はクラブワールドカップの後に公式戦が残っていたことにむしろ感謝する。

「そこでふがいない戦いはできないので。誰が見ても『ああ、鹿島だな』という熱い試合をしなきゃいけないし、そういう調整をしていきたい」

 激動の1ヶ月間を通じて、昌子は無意識のうちにアントラーズの伝統を学び取った。誰にも負けたくないという想いを、初めて受賞したベストイレブンの個人タイトルを介して自信とともにさらに増幅させながら、ホームのカシマスタジアムにサンフレッチェ広島を迎える24日の天皇杯準々決勝から、新たなる目標をつかみ取るための戦いに臨む。

(取材・文:藤江直人)

【了】

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