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Jリーグ 7年前

昌子源、激動の1ヶ月で学びとった鹿島の伝統。「『いい試合をした』じゃあ意味がない」

text by 藤江直人 photo by Getty Images

クラブW杯で見せた「試合巧者ぶり」

 劇的な勝利の余韻が残るなか、埼玉スタジアムのロッカールームから試合後の取材エリアに向かいながら、昌子はメディアから投げかけられる質問を具体的に思い浮かべていたと笑う。

「鹿島の伝統とは、と聞かれるんやろうなと思っていたんですけど……プレーしている僕らも正直、わからないんですよね。でも、こうやって勝ったからこそ鹿島やと思うんだけど、これで浮かれてクラブワールドカップの1回戦で負けたりでもしたら、それこそ『何や、お前ら』となりますからね」

 1回戦でオークランド・シティ(ニュージーランド)、準々決勝でマメロディ・サンダウンズ(南アフリカ共和国)、そして準決勝でアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)と、異なる大陸王者を撃破したクラブワールドカップ。アントラーズの戦いには“ある傾向”が顕著だった。

 前半は劣勢に立たされ、後半になるとまるで別のチームが戦っているかのようにピッチのうえで躍動する。実際、3試合であげた7ゴールのうち、6つを後半になってあげている。

 すべての試合で、昌子をして「寝る間を惜しんで分析してくれた」と感謝させた、小杉光正テクニカルコーチが弾き出した対戦相手の隙や弱点を頭に叩き込んで前半のキックオフを迎えた。

 そのうえで感性をフル稼働させて、実際に対峙した相手の“生きた情報”をインプット。微修正を加えながら後半で圧倒するパターンは、アントラーズ伝統の「試合巧者ぶり」そのものでもあった。

 もっとも、18日の決勝だけは例外だった。相手は銀河系軍団と畏怖されるヨーロッパ王者。スーパースターのFWクリスティアーノ・ロナウドは左ウイングを主戦場としながら、ゴール前、そして右サイドとアントラーズにとって危険なすべてのエリアに神出鬼没で現れては脅威を与えてくる。

「(西)大伍君あたりがロナウド選手とバチバチやって、僕はワントップの(カリム・)ベンゼマ選手なのかなと思っていたけど、一番やらなあかんのは僕かなと。そこはしっかりと覚悟したい。対策? まったくないです。対策を練っても多分、意味がないやろうなと思うので」

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