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Jリーグ 7年前

昌子源、激動の1ヶ月で学びとった鹿島の伝統。「『いい試合をした』じゃあ意味がない」

Jリーグチャンピオンシップ制覇から、FIFAクラブワールドカップ準優勝へ。今シーズンの終盤戦で圧倒的な強さを誇った鹿島アントラーズで、ひときわ大きな存在感を放ったのが昌子源だ。クラブ伝統の「3番」を託されて2シーズン目で、Jリーグのベストイレブンにも初めて選出されたディフェンスリーダーは、26日間で7試合にフル出場を果たしたなかで何を感じ取ったのか。昌子が残した言葉の数々から、成長著しい24歳が残した戦いの軌跡を追った。(取材・文・藤江直人)

text by 藤江直人 photo by Getty Images

アントラーズの伝統とは何か

昌子源
2016シーズンのJリーグベストイレブンに選出された昌子源【写真:Getty Images】

 深紅のユニフォームを漆黒のタキシードに着替えて、鹿島アントラーズのDF昌子源は壇上にあがった。スタジアムのカクテル光線とはやや趣が異なる、華やかなスポットライトが緊張感を高めたのか。

 司会進行役を務めるサッカーに造詣の深い俳優、勝村政信から質問を投げかけられる。いきなり噛んでしまい、見守っていたチームメイトたちを苦笑させたが、思いはしっかりと伝えることができた。

「この賞を受賞するときに、まずはチームメイトの顔が浮かびました。僕一人での賞ではないので、まずはチームメイトに感謝したいと思います」

 20日夜に横浜アリーナで行われたJリーグアウォーズ。2016シーズンのJリーグを締めくくる晴れ舞台で、昌子は年間王者・アントラーズからただ一人、ベストイレブンに選出された。

 アントラーズからは、Jクラブのなかでは最多となる通算20人目の選出。背番号3の系譜に名前を連ねるクラブのレジェンド、秋田豊と岩政大樹に個人タイルの部門で肩を並べることができた。

 昌子自身も手応えを感じていたのだろう。レアル・マドリー(スペイン)とのFIFAクラブワールドカップ2016決勝を終えた直後。横浜国際総合競技場の取材エリアで、こんな言葉を残している。

「成長したな、と自分でも思うけど、ここにきて成長したわけではない。僕は今シーズンのJリーグを通して成長してきたと思っているし、だからこそ集大成となる試合で、チームを勝たせることのできる選手にならないといけなかった。秋田さんや(岩政)大樹さんは、そういう選手だったと思うので」

 年間勝ち点3位からの下克上を成就させたJリーグチャンピオンシップ。そして、未知の敵を次々と撃破したFIFAクラブワールドカップ。26日間で計7試合、延長戦をひとつ含めた660分間にフル出場してきたなかで、昌子は心のどこかで常に自問自答していた。

 アントラーズの伝統とは何か――。ディフェンスリーダーの証である背番号3を継承して2シーズン目。レギュラーシーズン後の大舞台に初めて臨むうえで、自然と芽生えた疑問でもあった。

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