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Jリーグ 7年前

昌子源、激動の1ヶ月で学びとった鹿島の伝統。「『いい試合をした』じゃあ意味がない」

text by 藤江直人 photo by Getty Images

CS準決勝直前に見た岩政の映像

昌子源
以前鹿島アントラーズの背番号3を背負っていた岩政大樹(左)【写真:Getty Images】

 川崎フロンターレのホーム・等々力陸上競技場に乗り込んだ、11月23日のチャンピオンシップ準決勝直前のこと。普段は好きな音楽を聴きながら集中力を高めるはずが、まるで何かに導かれるかのように動画投稿サイト『YouTube』を開き、ある試合の映像をクリックした。

 自身が入団する前の2009年12月5日。アントラーズが前人未踏のリーグ3連覇を達成した浦和レッズとの最終節で、鬼気迫る表情でプレーしている岩政の一挙手一投足に目を奪われた。

「試合終盤は押せ押せになった浦和を鹿島がことごとく跳ね返して、結局はゼロに抑えて優勝した。確か高原(直泰)さんが放った決定的なシュートを、大樹さんが一歩寄せて、左足に当てて防いでいた。あの時間帯、あの場面で左足が出るなんて、もう奇跡としか言いようがない。何が大樹さんを動かしていたのか。あれが鹿島や、あれが鹿島の3番やと思いましたね」

 図らずもメディア上で名前を出された岩政から連絡をもらったこともあり、チームを勝たせる存在になるためのチャレンジへ、タイトルを取らせるための戦いへ、モチベーションはさらに増した。

 レッズの先勝で迎えた、今月3日のチャンピオンシップ決勝第2戦。開始早々に1点を失い、迎えた前半26分に、おそらくは語り継がれていく伝説のシュートブロックが生まれた。

 高い位置でボールを奪われ、前線のMF武藤雄樹へスルーパスが通される。ノーマークの状態でシュートを放った武藤の死角から、トップスピードでブロックに飛び込んできたのは昌子だった。

「一歩遅れたのでダメかなと思いましたけど……ここで僕が届かんかったらもう試合は終わりやと、本当に気持ちだけで滑ったし、そうしたら微妙に足の先に当たってくれた」

 からくもコーナーキックに逃れた場面を境に少しずつ試合の流れが変わり、前半40分、後半34分のFW金崎夢生の連続ゴールにつながった。年間王者を手繰り寄せたタックルといっていい。

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