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Jリーグ 7年前

Jリーグクラブライセンス事務局の暴挙。不可解な人事介入を追う【後編】

text by 木村元彦 photo by Getty Images

担保されていないJリーグにおける司法の独立性

 制度に沿って話を進めよう。かように理不尽な要求がCLAからチェアマンにすら知らされないままに地方クラブになされて、それでライセンスが不交付になった場合、これはおかしいではないかと上訴したいとなったとき、先述した理由でABではすでに独立性に信頼がおけない。では外部仲裁機関に持っていくのはどうか。

 後述するが、サッカー界の紛争はJSAA(日本スポーツ仲裁機構)では受諾されないので国際機関のCAS(スポーツ仲裁裁判所)になってしまう。ところが、第3章第17条〔ABの権限および義務〕(5)にはこうある。

「ABパネルの決定は、最終的かつ拘束力のあるものであり、これに対するいかなる不服の申立ても許されないものとする。ローザンヌのスポーツ仲裁所(CAS)は、AFCの不服申し立て機関であって、クラブとAFC間の問題についてのみ管轄を有する」申し立てが出来ない。最終決定であり、AFC間とのトラブルでなければCASには持って行っても無駄ですと言っているのだ。

 しかし、これも一読して違和感を禁じえない。そもそもクラブライセンス制度はあくまでもローカルルールなのだから、クラブとAFC間で問題が派生するはずがない。AFCと絡むのはACLに出場するJ1のほんの一握りのチームに過ぎない。

 念のためAFCに、「クラブライセンスの制度設計や決定に異議がある場合、AFCに上訴、報告することは可能かどうか?」をファックスで問い合わせてみた。すると「それはJリーグの問題であるからJリーグに聞いて欲しい」というローカルルールを踏まえた真っ当なレスポンスが返ってきた。

 アスリートの人権状況やスポーツ団体のガバナンスを長年ウオッチして来た日本のスポーツ関連法の権威である望月浩一郎弁護士に現在のJリーグクラブライセンス交付規則の機関のあり方について質問するとこうコメントした。

「競技団体の『司法』手続は、証拠により認められる事実を認定し、規則のうちに客観的に存在する心意・精神に基づき、規則に忠実に公正な判断することが求められており、そのためには、『司法』手続を担う判断機関には、

【1】具体的な紛争から中立で、独立していること、
【2】事実を正しく認定し、規則のうちに客観的に存在する心意・精神を解する見識と能力を有する専門性があること、が求められています。

 日本サッカー協会(JFA)は、司法的手続について、国際サッカー連盟(FIFA)からFIFA規約に基づき、国内の組織における「権限の分散(sepArAtion of powers)を確実にしなければならない(FIFA StAtutes 13条fおよびFIFA StAndArd StAtutes 19条)」などの指摘を受けたため、司法機関についての規定を大幅に改正し、2014年4月1日から、新規程が施行されました。しかし、JFAが行った司法の独立を担保するための改正は、Jリーグに関しては実現されていないといった問題は、現在でもここに残されています」

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