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Jリーグ 7年前

湘南のアイデンティティーを託された2人のホープ。幼稚園時からともにプレー、物語は新章へ

text by 藤江直人 photo by Getty Images

スポンサー撤退で育成部門は廃止の危機を迎えたことも

湘南ベルマーレの眞壁潔代表取締役会長
湘南ベルマーレの眞壁潔代表取締役会長【写真:Getty Images】

 菊地俊介、背番号を「16」から「6」に変えた石川俊輝、柏レイソルから期限付き移籍で加入した秋野央樹らが厚い壁を築くボランチへ。そして、キャプテンの高山薫、浦和レッズからの期限付き移籍を再延長して3年目を迎えた山田直輝、今シーズンから「7番」を託されたひとつ年上の神谷優太らがひしめくシャドーへ。ポジション争い割り込んでいきたいと齊藤は腕をぶす。

 一方で最終ラインは、3年間にわたって3バックの左を務めてきた三竿雄斗が、このオフにアントラーズへ移籍。実質ゼロからのポジション争いとなった状況に、「28番」を背負うことが決まった石原は闘志を高ぶらせる。

「(プロ契約は)通過点というか、ここからがスタート。最終的には世界を目指している者として、もっともっと努力を惜しまずにやっていきたい。ユースに上がってからは常にミツキが先にいることを考えたら、やっぱり大きな存在かもしれない。特に意識はしていないけど、そのなかで自然と競争してきたというか。ミツキがいるから、いまの僕があると思うので」

 メインスポンサーだった株式会社フジタの撤退に伴い、それまでのベルマーレ平塚から責任企業をもたない市民クラブの湘南ベルマーレへと生まれ変わったのが2000シーズン。資金難に直面していたこともあり、コストがかかる中学生以下の育成・普及部門を一時的に廃止してはどうか、という意見が出されたことがある。

 経営が安定したときに再び結成すればいい――まずは目の前の苦難を乗り越えるべきだ、とする提案に真っ向から異議を唱えて、存続への流れを作ったのが、常務として経営に参画したばかりの眞壁潔代表取締役会長だった。

 後にワールドカップ・ドイツ大会代表となる茂庭照幸(現セレッソ大阪)を輩出したジュニアユースを含めて、ピラミッドの底辺を支える子どもたちを手放すことは、ベルマーレのアイデンティティーをも捨て去ることになると、眞壁氏は未来を見すえながら経営陣を説き伏せた。

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